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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語32 第2巻 小松教訓③】〜The Tale of the Heike🥀

重盛は、父を諫めて、中門から出てきたが、

清盛の承諾を得たものの、

まだ何かと不安であったから、侍達を集めると、

「たとえ清盛公のご命令だからといって、

 大納言を殺すような事はするな。

 清盛公は、気の短いお人だから、腹立ちまぎれに、

 かっとなっては、後でいつも後悔なさる。

 お前達も、間違った真似《まね》をして、

 あとで、この私にどのような目にあわされても、

 恨むでないぞ」

とじろりと侍達を見廻したので、

一同、恐ろしさに震え上った。

重盛は、その中に、難波経遠、瀬尾兼康の二人を見つけると、

ずかずかと側に寄り、

「さても、経遠、兼康、今朝方、

 成親卿に対する振舞は余りにも礼儀知らずであったぞ。

 重盛の耳に入ることを考えてはいなかったのか、

 田舎武士《いなかざむらい》はいたし方ないものだのう」

といったので、二人とも、

恐れ入ったまま返事もできずうなだれていた。

成親捕わるの知らせは、

成親についてきた侍達の足で逸早く、

北の方《かた》に住む

中御門烏丸《なかみかどからすまる》の邸に知らされた。

北の方を始め、おつきの者達も、人目もはばからず泣き叫んだ。

「既に西八条から追手が出たと申します。

 少将殿始め、若君達も、全て捕われるという話でございますから、

 とにかく、急いでお姿をおかくしになった方が身の為でございます」

侍の言葉にも、北の方は、

唯、よよと身を震わせて、泣き崩れるばかりである。

「こんな悲しい身の上になって、いつまで安穏に生きのびるより、

 大納言様と同じく殺されてしまった方がいい。

 それにしても、今朝が今生最後のお別れだったとは、

 何としても悲しいものよ」

そのまま、泣き伏してしまうのである。

そのうちに、追手の武士達が迫っているという情報がもたらされて、

やはり捕まって恥知らずな悲しい目にあうよりもと、

仕方なく、十の長女と八つの男の子とを連れ、

どこというあてもなく、車に乗った。

といっても、どこかに落着かないわけにもいかず、

北山の雲林院《うんりんいん》近くの僧庵の一つに

漸く身をかくまった。

送ってきた侍達も、わが身の愛《いと》しさに、

暇を告げて帰ってしまうと、残っているのは、

頑是《がんぜ》ない子供ばかりである。

話相手もないまま、自然想いは、夫大納言の身の上にとんでゆく。

暮色も漸く迫ってきた。

庭のあたりを見ながら、大納言のお命は今夜限りかと思えば、

又新しい涙がつきるところを知らない。

 いつもは、侍女、侍達がせわしく働いている屋敷の内も

今は唯ひっそりとして、物は取り散らかされ、

門をしめる者もいず、馬に草をやろうともしない。

僅かばかり北の方についていた留守居の者たちも、

今は何をする気力もなく、

唯、これからの不安に茫然《ぼうぜん》とするばかりである。

 

昨日までは、夜もまだ明けやらぬ内から、

車馬が立ち並び、邸の中は客人でにぎわって、

毎日を遊び暮し、世を世とも思わぬ豪勢な暮しっ振りで、

近所の人も声を忍んで遠慮する程の家だった大納言家も、

たった一夜の内に、余りといえば余りの変り方である。

栄える者は必ず滅びる、楽しみ尽きて悲しみきたる。

この言葉を、

まざまざとみせつけられた大納言家の変りようであった。

🥀🎼虚ろな旅 written by 藍舟

 

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