あとから来て帰って行こうとする大学生のあるのを聞いて、
源氏はその人々を別に釣殿《つりどの》のほうでもてなした。
贈り物もした。
式が終わって退出しようとする博士と詩人を
また源氏はとどめて詩を作ることにした。
高官や殿上役人もそのほうの才のある人は皆残したのである。
博士たちは律の詩、源氏その他の人は絶句を作るのであった。
おもしろい題を文章博士《もんじょうはかせ》が選んだ。
短夜のころであったから、夜がすっかり明けてから詩は講ぜられた。
左中弁《さちゅうべん》が講師の役をしたのである。
きれいな男の左中弁が重々しい神さびた調子で
詩を読み上げるのが感じよく思われた。
この人はことに深い学殖のある博士なのである。
こうした大貴族の家に生まれて、
栄華に戯れてもいるはずの人が蛍雪《けいせつ》の苦を積んで
学問を志すということをいろいろの譬《たと》えを借りて
讃美《さんび》した作は句ごとにおもしろかった。
支那《しな》の人に見せて
批評をさせてみたいほどの詩ばかりであると言われた。
源氏のはむろん傑作であった。
子を思う親の情がよく現われているといって、
列席者は皆涙をこぼしながら誦《ず》した。
🪻🎼Nagare written by Fukagawa
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