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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

平家物語54 第3巻 御産①〈ごさん〉〜The Tale of the Heike🌊

鬼界ヶ島を立った丹波少将らの一行は、

肥前国 鹿瀬《かせ》の庄《しょう》に着いた。

宰相教盛は使いをやって、

「年内は波が荒く航海も困難であろうから、

 年が明けてから、京に帰るがよい」

といわせたので一行はここで新年を迎えることにした。

 十一月十二日未明、中宮が産気づかれた。

このうわさで京中はわき立ったが、

御産所の六波羅の池殿《いけどの》には、

法皇が行幸されたのをはじめとして、

関白殿以下、

太政大臣など官職をおびた文武百官一人ももれなく伺候した。

 これまでに、女御《にょうご》、

后《きさき》の御産の時に大赦が行なわれたことがあったが、

今度の御産の時も大赦が先例に従って行なわれ、

多くの重罪の者も許された。こうしたなかで、

鬼界ヶ島の俊寛が、

ただ一人許されなかったのは気の毒なことであった。

 

中宮は、安産の願立《がんだて》を行なわれ、

皇子がお生れになったら、

八幡、平野、大原野などへ行啓になるということであった。

神社は大神宮をはじめ二十四カ所、

仏寺は東大寺以下二十カ所で安産が祈られた。

安産読経の御使には、

中宮の侍の中でも官位あるものがえらばれ、

何れも平紋《ひょうもん》の狩衣《かりぎぬ》に帯剣、

お経の施物、御剣《ぎょけん》、御衣《ぎょい》を捧げ持ち、

次々に東の対《たい》より南庭を渡り、

西の中門へ静かに出て行くさまは、

まことに壮厳で美しかった。

 中宮の兄に当る小松大臣重盛は、良いにつけ、悪いにつけ、

騒ぎ立てぬ性格であったが、今度の御産のときでも、

大騒ぎが一段落してから、

長男少将維盛以下の子息の車を続けて御産所に送られ、

御衣四十かさね、銀剣七ふり、

馬十二頭に引かせてこられた。

 

なお伊勢大神宮を始め、安芸の厳島神社など七十カ所余りに、

神馬を寄進し、宮中にも御馬数十匹を奉った。

 一方、有名な寺の高僧たちは、

安産のためあらゆる秘法を動員して、

最後の努力をはらっていた。

すなわち、

仁和寺の御室《みむろ》守覚《しゅかく》法親王は孔雀の法、

天台座主 覚快《かくかい》法親王は七 仏薬師《ぶつやくし》の法、

三井寺の円慶《えんけい》法親王は金剛童子の法、

そのほか五大虚空蔵《ごだいこくうぞう》、六観音から、

普賢延命《ふげんえんめい》にいたるまで、

ありとあらゆる秘法が行なわれたのである。

このため、

護摩《ごま》の煙は御所中にもうもうと立ちこめ、

振る鈴の音は地を這い天にまでのぼる始末、

修法の声は身の毛もよだつようにとどろく有様で、

これでは、どんな物の怪も退散すると思われた。

🪷🎼遠い夜明け written by Heitaro Ashibe

 

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