ずいぶん老人《としより》めいておしまいになったと思いながらも
源氏は畏《かしこ》まって申し上げた。
「院がお崩《かく》れになりまして以来、
すべてのことが
同じこの世のことと思われませんような変わり方で、
思いがけぬ所罰も受けまして、
遠国に漂泊《さすら》えておりましたが、
たまたま帰京が許されることになりますと、
また雑務に追われてばかりおりますようなことで、
長い前からお伺いいたして故院のお話を承りもし、
お聞きもいただきたいと存じながら果たしえませんことで
悶々《もんもん》としておりました」
「あなたの不幸だったころの世の中はまあどうだったろう。
昔の御代もそうした時代も
同じようにながめていねばならぬことで
私は長生きがいやでしたが、
またあなたがお栄えになる日を見ることができたために、
私の考えはまた違ってきましたよ。
あの中途で死んでいたらと思うのでね、
長生きがよくなったのですよ」
ぶるぶるとお声が震う。
🌿#雨と流れる written by #もっぴーさうんど
少納言のホームページ 源氏物語&古典 少納言の部屋 ぜひご覧ください🪷
https://syounagon.jimdosite.com
🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷