尚侍《ないしのかみ》は
源氏の追放された直接の原因になった女性であるから、
世間からは嘲笑的に注視され、
恋人には遠く離れて、
深い歎《なげ》きの中に溺れているのを、
大臣は最も愛している娘であったから憐《あわ》れに思って、
熱心に太后へ取りなしをしたし、
帝へもお詫びを申し上げたので、
尚侍は公式の女官長であって、
燕寝《えんしん》に侍する女御《にょご》、
更衣《こうい》が起こした問題ではないから、
過失として勅免があればそれでよいということになった。
帝の御愛寵《あいちょう》を裏切って情人を持った点を
お憎みになったのであるが、
赦免の宣旨《せんじ》が出て
宮中へまたはいることになっても、
尚侍の心は源氏の恋しさに満たされていた。
七月になってその事が実現された。
非常なお気に入りであったのであるから、
人の譏《そし》りも思召《おぼしめ》さずに、
お常御殿の宿直所《とのいどころ》にばかり尚侍は置かれていた。
お恨みになったり、永久に変わらぬ愛の誓いを仰せられたりする
帝の御|風采《ふうさい》はごりっぱで、優美な方なのであるが、
これを飽き足らぬものとは自覚していないが、
なお尚侍には源氏ばかりが恋しいというのはもったいない次第である。
【源氏物語 第十二帖 須磨(すま)】
朧月夜との仲が発覚し、追いつめられた光源氏は
後見する東宮に累が及ばないよう、
自ら須磨への退去を決意する。
左大臣家を始めとする親しい人々や藤壺に暇乞いをし、
東宮や女君たちには別れの文を送り、
一人残してゆく紫の上には領地や財産をすべて託した。
須磨へ発つ直前、桐壺帝の御陵に参拝したところ、
生前の父帝の幻がはっきり目の前に現れ、
源氏は悲しみを新たにする。
須磨の侘び住まいで、
源氏は都の人々と便りを交わしたり
絵を描いたりしつつ、淋しい日々を送る。
つれづれの物語に明石の君の噂を聞き、
また都から頭中将がはるばる訪ねてきて、
一時の再会を喜び合った。
やがて三月上巳の日、
海辺で祓えを執り行った矢先に
恐ろしい嵐が須磨一帯を襲い、
源氏一行は皆恐怖におののいた。
❄️🎼ある冬の寒い夜に written by MATSU❄️
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