帝は近く御遜位《ごそんい》の思召しがあるのであるが、
尚侍《ないしのかみ》がたよりないふうに見えるのを
憐《あわ》れに思召した。
「大臣は亡《な》くなるし、
大宮も始終お悪いのに、
私さえも余命がないような気がしているのだから、
だれの保護も受けられないあなたは、
孤独になってどうなるだろうと心配する。
初めからあなたの愛はほかの人に向かっていて、
私を何とも思っていないのだが、
私はだれよりもあなたが好きなのだから、
あなたのことばかりがこんな時にも思われる。
私よりも優越者がまたあなたと恋愛生活をしても、
私ほどにはあなたを思ってはくれないことはないかと、
私はそんなことまでも考えてあなたのために泣かれるのだ」
帝は泣いておいでになった。
🪷🎼黄昏と水平線 written by 天野 七祈🪷
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