僧都は昔風に咳《せき》払いをしながら、
世の中のお話を申し上げていたが、
その続きに、
「まことに申し上げにくいことでございまして、
かえってそのことが罪を作りますことになるかもしれませんから、
躊躇《ちゅうちょ》はいたされますが、
陛下がご存じにならないでは
相当な大きな罪をお得になることでございますから、
天の目の恐ろしさを思いまして、
私は苦しみながら亡《な》くなりますれば、
やはり陛下のおためにはならないばかりでなく、
仏様からも卑怯者としてお憎しみを受けると思いまして」
こんなことを言い出した。
しかもすぐにはあとを言わずにいるのである。
帝は何のことであろう、
今日もまだ意志の通らぬことがあって、
それの解決を見た上でなければ清い往生のできぬような
不安があるのかもしれない。
僧というものは俗を離れた世界に住みながら
嫉妬《しっと》排擠《はいせい》が多くて
うるさいものだそうであるからと思召して、
「私は子供の時から続いてあなたを
最も親しい者として信用しているのであるが、
あなたのほうには私に言えないことを
持っているような隔てがあったのかと思うと少し恨めしい」
と仰せられた。
🪷🎼サラワクの秘密 written by ハシマミ
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