斎院は父宮の喪のために職をお辞しになった。
源氏は例のように古い恋も忘れることのできぬ癖で、
始終手紙を送っているのであったが、
斎院御在職時代に迷惑をされた噂の相手である人に、
女王は打ち解けた返事をお書きになることもなかった。
九月になって旧邸の桃園の宮へお移りになったのを聞いて、
そこには御叔母の女五《にょご》の宮が
同居しておいでになったから、
そのお見舞いに託して源氏は訪問して行った。
故院がこの御同胞《はらから》がたを
懇切にお扱いになったことによって、
今もそうした方々と源氏には
親しい交際が残っているのである。
🌺🎼Anemone written by H.Lang
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