源氏は一廷臣として太政大臣に続いて
また女院のすでに危篤状態になっておいでになることは
歎《なげ》かわしいとしていた。
人知れぬ心の中では無限の悲しみをしていて、
あらゆる神仏に頼んで
宮のお命をとどめようとしているのである。
もう長い間禁制の言葉としておさえていた
初恋以来の心を告げることが、
この際になるまで果たしえないことを
源氏は非常に悲しいことであると思った。
源氏は伺候して
女院の御寝室の境に立った几帳《きちょう》の前で
御容体などを女房たちに聞いてみると、
ごく親しくお仕えする人たちだけがそこにはいて、
くわしく話してくれた。
「もうずっと前からお悪いのを我慢あそばして
仏様のお勤めを少しもお休みになりませんでしたのが、
積もり積もってどっとお悪くおなりあそばしたのでございます。
このごろでは柑子《こうじ》類すらもお口にお触れになりませんから、
御衰弱が進むばかりで、
御心配申し上げるような御容体におなりあそばしました」
と歎くのであった。
🍂冬木立にカラス written by 稿屋 隆
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