僧都は進んで秘密をお知らせ申し上げたことを
御不快に思召すのかと恐懼《きょうく》して、
そっと退出しようとしたのを、
帝はおとどめになった。
「それを自分が知らないままで済んだなら
後世《ごせ》までも罪を負って行かなければならなかったと思う。
今まで言ってくれなかったことを
私はむしろあなたに信用がなかったのかと恨めしく思う。
そのことをほかにも知った者があるだろうか」
と仰せられる。
「決してございません。
私と王命婦以外にこの秘密をうかがい知った者はございません。
その隠れた事実のために
恐ろしい天の譴《さとし》がしきりにあるのでございます。
世間に何となく不安な気分のございますのも
このためなのでございます。
御幼年で何のお弁《わきま》えもおありあそばさないころは
天もとがめないのでございますが、
大人におなりあそばされた今日になって天が怒りを示すのでございます。
すべてのことは御両親の御代《みよ》から始められなければなりません。
何の罪とも知《しろ》し召さないことが恐ろしゅうございますから、
いったん忘却の中へ追ったことを私はまた取り出して申し上げました」
泣く泣く僧都の語るうちに朝が来たので退出してしまった。
🪷🎼The Lampe written by Addpico
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