はっきりとされない御容体の幾月も続くのをすら
帝は悲しんでおいでになりながら、
そのころにもっとよく御養生をさせ、
熱心に祈祷《きとう》をさせなかったかと
帝は悔やんでおいでになった。
近ごろになってお驚きになったように
急に御快癒《かいゆ》の法などを
行なわせておいでになるのである。
これまでは
お弱い方にまた御持病が出たというように解釈して
油断のあったことを源氏も深く歎《なげ》いていた。
尊貴な御身は御病母のもとにも
長くはおとどまりになることができずに
間もなくお帰りになるのであった。
悲しい日であった。
女院は御病苦のためにはかばかしく
ものもお言われになれないのである。
お心の中ではすぐれた高貴の身に生まれて、
人間の最上の光栄とする后《きさき》の位にも自分は上った。
不満足なことの多いようにも思ったが、
考えればだれの幸福よりも
大きな幸福のあった自分であるとも思召した。
帝が夢にも源氏との重い関係をご存じでないことだけを
女院はおいたわしくお思いになって、
これがこの世に心の残ることのような気があそばされた。
🪷百鬼夜行 written by のる
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