二条の院に着いた源氏はしばらく休息をしながら
夫人に嵯峨《さが》の話をした。
「あなたと約束した日が過ぎたから私は苦しみましたよ。
風流男どもがあとを追って来てね、
あまり留めるものだからそれに引かれていたのですよ。疲れてしまった」
と言って源氏は寝室へはいった。
夫人が気むずかしいふうになっているのも気づかないように源氏は扱っていた。
「比較にならない人を競争者ででもあるように考えたりなどすることも
よくないことですよ。
あなたは自分は自分であると思い上がっていればいいのですよ」
と源氏は教えていた。
日暮れ前に参内しようとして出かけぎわに、
源氏は隠すように紙を持って手紙を書いているのは大井へやるものらしかった。
こまごまと書かれている様子がうかがわれるのであった。
侍を呼んで小声でささやきながら手紙を渡す源氏を女房たちは憎く思った。
🪻🎼KANADE written by のる
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