東の渡殿《わたどの》の下をくぐって来る流れの筋を
仕変えたりする指図《さしず》に、
源氏は袿《うちぎ》を引き掛けたくつろぎ姿でいるのが
また尼君にはうれしいのであった。
仏の閼伽《あか》の具などが縁に置かれてあるのを見て、
源氏はその中が尼君の部屋であることに気がついた。
「尼君はこちらにおいでになりますか。
だらしのない姿をしています」
と言って、
源氏は直衣《のうし》を取り寄せて着かえた。
几帳《きちょう》の前にすわって、
「子供がよい子に育ちましたのは、
あなたの祈りを仏様がいれてくだすったせいだろうと
ありがたく思います。
俗をお離れになった清い御生活から、
私たちのためにまた世の中へ帰って来てくだすったことを
感謝しています。
明石ではまた一人でお残りになって、
どんなにこちらのことを想像して
心配していてくださるだろうと済まなく私は思っています」
となつかしいふうに話した。
🪷静寂の庭 written by のる🪷
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