その晩は御所で宿直《とのい》もするはずであるが、
夫人の機嫌《きげん》の直っていなかったことを思って、
夜はふけていたが源氏は夫人をなだめるつもりで帰って来ると、
大井の返事を使いが持って来た。
隠すこともできずに源氏は夫人のそばでそれを読んだ。
夫人を不愉快にするようなことも書いてなかったので、
「これを破ってあなたの手で捨ててください。困るからね、
こんな物が散らばっていたりすることはもう
私に似合ったことではないのだからね」
と夫人のほうへそれを出した源氏は、
脇息《きょうそく》によりかかりながら、
心のうちでは大井の姫君が恋しくて、灯《ひ》をながめて、
ものも言わずにじっとしていた。
手紙はひろがったままであるが、
女王《にょおう》が見ようともしないのを見て、
「見ないようにしていて、
目のどこかであなたは見ているじゃありませんか」
と笑いながら夫人に言いかけた源氏の顔には
こぼれるような愛嬌《あいきょう》があった。
🪻🎼冬桜が空に舞う written by alaki paca
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