源氏は御堂《みどう》へ行って
毎月十四、五日と三十日に行なう普賢講《ふげんこう》、
阿弥陀《あみだ》,
釈迦《しゃか》の念仏の三昧《さんまい》のほかにも
日を決めてする法会《ほうえ》のことを
僧たちに命じたりした。
堂の装飾や仏具の製作などのことも御堂の人々へ指図してから、
月明の路《みち》を川沿いの山荘へ帰って来た。
明石の別離の夜のことが源氏の胸によみがえって
感傷的な気分になっている時に
女はその夜の形見の琴を差し出した。
弾《ひ》きたい欲求もあって源氏は琴を弾き始めた。
まだ絃《いと》の音《ね》が変わっていなかった。
その夜が今であるようにも思われる。
契りしに 変はらぬ琴の しらべにて
絶えぬ心の ほどは知りきや
と言うと、女が、
変はらじと 契りしことを 頼みにて
松の響に 音《ね》を添へしかな
と言う。
こんなことが不つりあいに見えないのは
女からいえば過分なことであった。
明石時代よりも女の美に光彩が加わっていた。
源氏は永久に離れがたい人になったと明石を思っている。
🪷風に歌、君に愛を written by のる🪷
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