夫人は桂の院という別荘の
新築されつつあることを聞いたが、
そこへ明石の人を迎えたのであったかと気づくと
うれしいこととは思えなかった。
「斧《おの》の柄を新しくなさらなければ
(仙人《せんにん》の碁を見物している間に、
時がたって気がついてみるとその樵夫《きこり》の
持っていた斧の柄は朽ちていたという話)
ならないほどの時間はさぞ待ち遠いことでしょう」
不愉快そうなこんな夫人の返事が源氏に伝えられた。
「また意外なことをお言いになる。
私はもうすっかり昔の私でなくなったと
世間でも言うではありませんか」
などと言わせて夫人の機嫌を直させようとするうちに昼になった。
🪷鶴の声 written by ゆうり🪷
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