姫君の顔からもまた目は離せなかった。
日蔭《ひかげ》の子として成長していくのが、
堪えられないほど源氏はかわいそうで、
これを二条の院へ引き取って
できる限りにかしずいてやることにすれば、
成長後の肩身の狭さも救われることになるであろうとは
源氏の心に思われることであったが、
また引き放される明石の心が哀れに思われて
口へそのことは出ずにただ涙ぐんで姫君の顔を見ていた。
子心にはじめは少し恥ずかしがっていたが、
今はもうよく馴れてきて、
ものを言って、笑ったりもしてみせた。
甘えて近づいて来る顔が
またいっそう美しくてかわいいのである。
源氏に抱かれている姫君は
すでに類のない幸運に恵まれた人と見えた。
🪷静かな夜(Quiet Night) written by 蒲鉾さちこ 🪷
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