以前の伊予介《いよのすけ》は
院がお崩《かく》れになった翌年
常陸介《ひたちのすけ》になって任地へ下ったので、
昔の帚木《ははきぎ》もつれて行った。
源氏が須磨《すま》へ引きこもった噂《うわさ》も、
遠い国で聞いて、悲しく思いやらないのではなかったが、
音信をする便《たより》すらなくて、
筑波《つくば》おろしに落ち着かぬ心を抱きながら
消息の絶えた年月を空蝉《うつせみ》は重ねたのである。
限定された国司の任期とは違って、
いつを限りとも予想されなかった源氏の放浪の旅も終わって、
帰京した翌年の秋に常陸介は国を立って来た。
一行が逢坂《おうさか》の関を越えようとする日は、
偶然にも源氏が石山寺へ願ほどきに参詣する日であった。
🌸青空と君と(Blue sky and You) written by 蒲鉾さちこ 🌸
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