またあとに法華経《ほけきょう》の八講を催されるはずで
いろいろと準備をしておいでになった。
十一月の初めの御命日に雪がひどく降った。
源氏から中宮へ歌が送られた。
別れにし 今日《けふ》は来れども 見し人に
行き逢《あ》ふほどをいつと頼まん
中宮のためにもお悲しい日で、すぐにお返事があった。
ながらふる ほどは憂《う》けれど 行きめぐり
今日はその世に 逢ふ心地《ここち》して
巧みに書こうともしてない字が
雅趣に富んだ気高《けだか》いものに見えるのも
源氏の思いなしであろう。
特色のある派手な字というのではないが
決して平凡ではないのである。
今日だけは恋も忘れて終日 御父の院のために
雪の中で仏勤めをして源氏は暮らしたのである。
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【源氏物語 第十帖 賢木 さかき】
正妻の葵の上が亡くなった。
六条御息所も晴れて源氏の正妻に迎えられるだろうと
世間は噂していた。
しかし 源氏は冷たくなり 縁が程遠くなった御息所。
彼女は 悩みながらも斎宮とともに伊勢に下ることにする。
いよいよ出発間近となった。
このまま別れるのはあまりにも忍びないと、
源氏も御息所のもとを訪ねる。
顔を合わせてしまうとやはり再び思いが乱れる御息所だったが、
伊勢へと下って行った。
桐壷院の病が重くなる。
死期を悟った院は朱雀帝に春宮と源氏のことを
遺言で託した後 ほどなく崩御してしまう。 時勢は、
左大臣側から朱雀帝の外戚である右大臣側に移って行った。
朱雀帝の優しい性格もあって、
政治は右大臣に権力が集中していった。
❄️忘れえぬ季節 written by のる❄️
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