太后はお驚きになった。
「ふがいなく思召すでしょうが、
私はこうして静かにあなたへ御孝養がしたいのです」
と帝はお慰めになったのであった。
東宮には承香殿《じょうきょうでん》の女御のお生みした皇子が
お立ちになった。
すべてのことに新しい御代《みよ》の光の見える日になった。
見聞きする眼に耳にはなやかな気分の味わわれることが多かった。
源氏の大納言は内大臣になった。
左右の大臣の席がふさがっていたからである。
そして摂政《せっしょう》にこの人がなることも当
然のことと思われていたが、
「私はそんな忙しい職に堪えられない」
と言って、
致仕《ちし》の左大臣に摂政を譲った。
🌸🎼春の兆し(Signs of spring)
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