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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【源氏物語335 第12帖 須磨69】「これは形見だと思っていただきたい」宰相は大切な笛を源氏に贈る。友情がしばらく慰めたあとの源氏はまた寂しい人になった。

「これは形見だと思っていただきたい」

宰相も名高い品になっている笛を一つ置いて行った。

人目に立って問題になるようなことは

双方でしなかったのである。

上って来た日に帰りを急ぎ立てられる気がして、

宰相は顧みばかりしながら座を立って行くのを、

見送るために続いて立った源氏は悲しそうであった。

「いつまたお逢いすることができるでしょう。

 このまま無限にあなたが捨て置かれるようなことはありません」

と宰相は言った。

雲近く 飛びかふ鶴《たづ》も 空に見よ

 われは春日の 曇りなき身ぞ

 みずからやましいと思うことはないのですが、

 一度こうなっては、

 昔のりっぱな人でももう一度世に出た例は少ないのですから、

 私は都というものをぜひまた見たいとも願っていませんよ」

こう源氏は答えて言うのであった。

「たづかなき 雲井に独《ひと》り音《ね》をぞ鳴く 

 翅《つばさ》並べし 友を恋ひつつ

 失礼なまでお親しくさせていただいたころのことを

 もったいないことだと後悔される事が多いのですよ」

と宰相は言いつつ去った。

友情がしばらく慰めたあとの源氏はまた寂しい人になった。

🌟🎼 流星群の夜 written by ハヤシユウ🌟


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