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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語42第2巻 徳大寺の沙汰】〜The Tale of the Heike🪷

そもそも成親卿が平家滅亡の計りごとを練るようになったのは、

いつかの人事異動が基であったのだが、

あの時に、やはり、右大将を平宗盛に横取りされて、

がっかりして家にひきこもってしまった人がある。

徳大寺大納言 実定《じってい》である。

その後も、

平家専横の世の中にいよいよ愛想をつかした実定は、

出家の志を立てた。ある月の良い晩であった。

実定は、

南面の御格子《みこうし》をあげて月を眺めながら、

行末のことなど思いふけっていると、

藤大夫重兼《とうのだいふしげかね》という家来が参上してきた。

「何じゃ、今時分?」

「いえ、唯、余りに月がよろしいので、

 何となくご機嫌伺いに参りました」

「それは丁度よい、

 わしも話相手がないものかと思っていたところだった」

実定は重兼を相手に、

四方山《よもやま》の世間話に打ち興じていたが、

その内いつしか話題は平家一門の話にもふれていった。

「全く近頃、平家の勢は恐ろしいくらいじゃ、

 重盛、宗盛と息子が揃って左右の大将、

 後には、三男知盛、孫の維盛もおることだし、

 平家以外の家の者では、大将になる望みはなさそうじゃ。

 わしも、いつかはと思っていたが、

 この分では、到底、望んでも無駄だと覚ったのじゃ。

 いっそ出家でもしようかと思ってのう」

 

「それはとんでもない、早まったお考えかと思います。

 もし殿がご出家遊ばすような事にでもなったら、

 家内中が途方に暮れてしまいます。

 それよりも、私一寸した名案があるのでございます。

 それは他でもない、

 安芸の厳島《いつくしま》へご祈願にお出でになるのです。

 あすこは平家の人々が敬い崇《あが》めるお社でございます。

 何もおかしいことはありません、

 あすこには内侍《ないし》と申す舞姫がおります。

 彼女らはきっと珍しがっていろいろ接待する筈でございます、

 その時、何をお祈りにいらしたのですか? 

 と聞くに違いありませぬ、

 ありのまま仰有《おっしゃ》るがよろしゅうございます。

 ご帰京の際は、重だった内侍を連れて都へお帰り下さい、

 彼女らは帰りにきっと

 西八条の清盛公のお邸にご挨拶にいきます。

 清盛公は、

 上京の目的を内侍にお尋ねになるに決っております、

 すなわち、殿のご祈願のことも、清盛公の耳に入ります、

 平家の尊崇する社に祈願したと聞けば、

 喜ぶに決っています、

 何か良いあんばいに事が運ぶかも知れません」

熱心に耳を傾けていた実定は手をたたいて喜んだ。

「全くだ、確かに妙案かも知れぬ。

 早速、参詣の準備をいたせ」

さて、安芸の厳島につくと、

そこには内侍と呼ばれる美しい舞姫がいて、

日夜参詣人をもてなす習わしであった。

「この社に、平家以外の方のご参詣とは珍しいこと」

といって、舞楽《ぶがく》、神楽《かぐら》、琵琶《びわ》、

琴と、ある限りのもてなしをして、実定を慰めた。

「それにしても珍しい、

 一体何をご祈願にいらしたのですか?」

案の定、内侍が尋ねたので、実定はかねて定めた通り、

「日頃望みの大将の位を、他人に越されてしまったので、

 その祈願達成のため」

と答えた。

 

さて七日の参籠が済むと、重立った内侍十数人は、

船を仕立てて都まで見送ってきた。

実定は、邸に連れてきて丁重にもてなし、

土産まで与えて帰した。

「折角ここまで来たのだから」

と内侍達は西八条に清盛を訪ねた。

突然の内侍達の訪問に、清盛は驚いてわけを尋ねた。

「徳大寺大納言のご参詣の帰途、

 名残惜しさにここまでついてきてしまいましたので」

「それは珍しい、

 何で又あの男が厳島に参詣に行ったのじゃろう」

「何でも、大将にご昇進のためのご祈願とか伺いましたが」

「何? そのためにわざわざ厳島まで下向いたしたと、

 それは又何と奇特なお人であろう。

 この京都にも由緒深い神社仏閣も多いのに、

 わざわざ平家一門の帰依《きえ》する厳島に参詣するとは、

 見上げた志じゃ」

清盛は、すっかり上機嫌になった。

間もなく重盛が左大将をやめ、

宗盛をこえて実定に左大将の辞令が下りた。

まんまと、主従の計画が功を奏したのである。

それにしても、成親も早まったことをしたものである。

謀叛などおこさずにもっと賢明なやり方で、

自分の身を守るべきであったのに惜しいことをしたものである。

🪷🎼天上世界 written byHeitaro Ashibe

 

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