「なぜそうしなければならないのでしょう。
どんなにごりっぱな方でも
娘のはじめての結婚に罪があって
流されて来ていらっしゃる方を
婿にしようなどと、私はそんな気がしません。
それも愛してくださればよろしゅうございますが、
そんなことは想像もされない。
戯談《じょうだん》にでも
そんなことはおっしゃらないでください」
と妻が言うと、
入道はくやしがって、
何か口の中でぶつぶつ言っていた。
「罪に問われることは、支那《しな》でもここでも
源氏の君のようなすぐれた天才的な方には
必ずある災厄なのだ、
源氏の君は何だと思う、
私の叔父だった按察使《あぜち》大納言の娘が母君なのだ。
すぐれた女性で、
宮仕えに出すと帝王の恩寵が一人に集まって、
それで人の嫉妬を多く受けて亡くなられたが、
源氏の君が残っておいでになるということは結構なことだ。
女という者は皆 桐壺の更衣《こうい》になろうとすべきだ。
私が地方に土着した田舎者だといっても、
その古い縁故でお近づきは許してくださるだろう」
などと入道は言っていた。
【源氏物語 第十二帖 須磨(すま)】
朧月夜との仲が発覚し、追いつめられた光源氏は
後見する東宮に累が及ばないよう、
自ら須磨への退去を決意する。
左大臣家を始めとする親しい人々や藤壺に暇乞いをし、
東宮や女君たちには別れの文を送り、
一人残してゆく紫の上には領地や財産をすべて託した。
須磨へ発つ直前、桐壺帝の御陵に参拝したところ、
生前の父帝の幻がはっきり目の前に現れ、
源氏は悲しみを新たにする。
須磨の侘び住まいで、
源氏は都の人々と便りを交わしたり
絵を描いたりしつつ、淋しい日々を送る。
つれづれの物語に明石の君の噂を聞き、
また都から頭中将がはるばる訪ねてきて、
一時の再会を喜び合った。
やがて三月上巳の日、
海辺で祓えを執り行った矢先に
恐ろしい嵐が須磨一帯を襲い、
源氏一行は皆恐怖におののいた。
🌿🎼静かな余韻(Quiet suggestiveness) written by 蒲鉾さちこ
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