西座敷のほうへは、静かに親しいふうではいって行った。
忍びやかに目の前へ現われて来た美しい恋人を見て、
どれほどの恨みが女にあっても忘却してしまったに違いない。
恋しかったことをいろいろな言葉にして源氏は告げていた。
嘘《うそ》ではないのである。
源氏の恋人である人は初めから平凡な階級でないせいであるか、
何らかの特色を備えてない人は稀《まれ》であった。
好意を持ち合って長く捨てない、
こんな間柄でいることを肯定のできない人は去って行く。
それもしかたがないと源氏は思っているのである。
さっきの町の家の女もその一人で、
現在はほかに愛人を持つ女であった。
🌼🎼風に歌、君に愛を written by のる🌼
【源氏物語 第十一帖 花散里(はなちるさと)】
光源氏25歳夏の話。
五月雨の頃、
源氏は故桐壺院の妃の一人麗景殿女御を訪ねる。
妹の三の君(花散里)は源氏の恋人で、
姉妹は院の没後源氏の庇護を頼りに
ひっそりと暮らしていた。
訪問の途中、
かつて会った中川の女の元に歌を詠みかけるが、
既に心変わりしてしまったのかやんわりと拒絶される。
女御の邸は橘の花が香り、
昔を忍ばせるほととぎすの声に
源氏は女御としみじみと昔話を語り合い、
その後そっと三の君を訪れた。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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