男はそれほど思っていないことでも
恋の手紙には感情を誇張して書くものであるが、
今の源氏の場合は、
ただの恋人とは決して思っていなかった御息所が、
愛の清算をしてしまったふうに
遠国へ行こうとするのであるから、
残念にも思われ、
気の毒であるとも反省しての煩悶《はんもん》の
かなりひどい実感で書いた手紙であるから、
女へそれが響いていったものに違いない。
御息所の旅中の衣服から、女房たちのまで、
そのほかの旅の用具もりっぱな物をそろえた餞別が
源氏から贈られて来ても、
御息所はうれしいなどと思うだけの余裕も心になかった。
噂に歌われるような恋をして、
最後には捨てられたということを、
今度始まったことのように口惜しく悲しくばかり思われるのであった。
お若い斎宮は、
いつのことともしれなかった出発の日の決まったことを
喜んでおいでになった。
世間では、母君がついて行くことが異例であると批難したり、
ある者はまた御息所の強い母性愛に同情したりしていた。
御息所が平凡な人であったら、
決してこうではなかったことと思われる。
傑出した人の行動は目に立ちやすくて気の毒である。
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