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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【源氏物語188 第九帖 葵61完】左大臣の北の方の宮様が源氏に、素晴らしい衣装を贈る。源氏は下襲をすぐにそれに替える。

宮様の挨拶を女房が取り次いで来た。

「今日だけはどうしても昔を忘れていなければならないと

辛抱しているのですが、御訪問くださいましたことでかえって

その努力がむだになってしまいました」

それから、また、

「昔からこちらで作らせますお召し物も、あれからのちは

涙で私の視力も曖昧なんですから不出来にばかりなりましたが、

今日だけはこんなものでもお着かえくださいませ」

 と言って、掛けてある物のほかに、

非常に凝った美しい衣裳一|揃《そろ》いが贈られた。

当然今日の着料になる物としてお作らせになった下襲は、

色も織り方も普通の品ではなかった。

着ねば力をお落としになるであろうと思って

源氏はすぐに下襲をそれに変えた。

もし自分が来なかったら失望あそばしたであろうと思うと

心苦しくてならないものがあった。

お返辞の挨拶は、

「春の参りましたしるしに、

当然参るべき私がお目にかかりに出たのですが、

あまりにいろいろなことが思い出されまして、

お話を伺いに上がれません。

あまたとし 今日改めし色ごろも きては涙ぞ 降るここちする

自分をおさえる力もないのでございます」

と取り次がせた。

宮から、

新しき 年ともいはず 降るものは ふりぬる人の 涙なりけり

という御返歌があった。

どんなにお悲しかったことであろう。

 

(訳注) 源氏二十二歳より二十三歳まで。

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