つれづれな源氏は西の対にばかりいて、
姫君と扁隠《へんかく》しの遊びなどをして日を暮らした。
相手の姫君のすぐれた芸術的な素質と、
頭のよさは源氏を多く喜ばせた。
ただ肉親のように愛撫《あいぶ》して
満足ができた過去とは違って、
愛すれば愛するほど加わってくる悩ましさは
堪えられないものになって、
心苦しい処置を源氏は取った。
そうしたことの前もあとも 女房たちの目には
違って見えることもなかったのであるが、
源氏だけは早く起きて、
姫君が床を離れない朝があった。
女房たちは、
「どうしてお寝《やす》みになったままなのでしょう。
御気分がお悪いのじゃないかしら」
とも言って心配していた。
源氏は東の対へ行く時に
硯《すずり》の箱を帳台の中へそっと入れて行ったのである。
だれもそばへ出て来そうでない時に若紫は頭を上げて見ると、
結んだ手紙が一つ枕の横にあった。
なにげなしにあけて見ると、
あやなくも 隔てけるかな 夜を重ね
さすがに馴《な》れし 中の衣を
と書いてあるようであった。
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