2024-04-29から1日間の記事一覧
中門に入った宰相に、清盛は目通りを許さなかった。 仕方なく宰相は源《げん》大夫判官 季貞《すえさだ》を通じて、 言葉を伝えて貰う事にした。 「つまらない人間と関り合いになったことは、 返すがえすも残念ですが、これもいたし方ありません。 成経に縁…
丹波少将|成経《なりつね》は、 その夜、院の御所の宿直で、まだ家には帰っていなかった。 そこへ、大納言の家来が、急を知らせにかけつけてきた。 始めて、事の子細を知った少将の驚きも深かった。 それにしても、宰相《さいしょう》殿から、 何ともいって…
それに続いてまた入学の式もあった。 東の院の中に若君の勉強部屋が設けられて、 まじめな学者を一人つけて源氏は学ばせた。 若君は大宮の所へもあまり行かないのであった。 夜も昼もおかわいがりにばかりなって、 いつまでも幼児であるように宮はお扱いにな…
重盛は、父を諫めて、中門から出てきたが、 清盛の承諾を得たものの、 まだ何かと不安であったから、侍達を集めると、 「たとえ清盛公のご命令だからといって、 大納言を殺すような事はするな。 清盛公は、気の短いお人だから、腹立ちまぎれに、 かっとなっ…
式場の席が足りないために、 あとから来て帰って行こうとする大学生のあるのを聞いて、 源氏はその人々を別に釣殿《つりどの》のほうでもてなした。 贈り物もした。 式が終わって退出しようとする博士と詩人を また源氏はとどめて詩を作ることにした。 高官…
成親は、庭先に頭をすりつけられながらも、 息子、丹波少将成経《たんばのしょうしょうなりつね》を始め 幼い子供達が、この後、どんな苦しみにあうのかと、 そればかりが心配であった。 丁度六月のさ中で、気候も暑い上に今、炎天下に引き出され、 汗と涙に…