2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧
源氏が帰京した翌年、常陸介(元伊予介)が任期を終えて、 妻空蝉と共に戻ってきた。 石山寺へ参詣途中の源氏は逢坂関で、空蝉の一行に巡り会う。 源氏は懐かしさに空蝉の弟右衛門佐(元小君)を呼び寄せ、 空蝉へ文を送った。 その後も二人は文を交わしたが…
かきつらね 昔のことぞ 思ほゆる 雁はそのよの友ならねども 須磨の里の秋 十五夜の月あかりのもと 良清の歌 〜次々と昔の事が懐かしく思い出されます 雁は 昔からの友達であったわけではないのだが 【12帖 須磨 すま】 初雁《はつかり》は 恋しき人の つらな…
尚侍《ないしのかみ》は 源氏の追放された直接の原因になった女性であるから、 世間からは嘲笑的に注視され、 恋人には遠く離れて、 深い歎《なげ》きの中に溺れているのを、 大臣は最も愛している娘であったから憐《あわ》れに思って、 熱心に太后へ取りな…
しほたるる ことをやくにて 松島に 年経《ふ》るあまもなげきをぞ積む 藤壺の宮が尼におなりになって お返事も以前のものより情味があった 〜涙を流し濡れているのを仕事として 出家したわたしも嘆きを積み重ねています 【第12帖 須磨 すま】 入道の宮も東宮…
手紙はこまごまと書いて送ることを怠らない。 二条の院にすぐ近い地所へ このごろ建築させている家のことを、 源氏は末摘花に告げて、 そこへあなたを迎えようと思う、 今から童女として使うのによい子供を選んで 馴らしておおきなさい。 ともその手紙には書…
ふる里を 峯の霞《かすみ》は 隔つれど 眺《なが》むる空は同じ雲井か 須磨の地で京に残してきた人たちのことを考え 悲しい気持ちになる源氏 〜住みなれた都の方を 峰の霞は遠く隔てている。 わたしが悲しい気持ちで眺めている空は 都であの人が眺めているの…
賀茂祭り、斎院の御禊《ごけい》などのあるころは、 その用意の品という名義で諸方から源氏へ送って来る物の多いのを、 源氏はまたあちらこちらへ分配した。 その中でも常陸の宮へ贈るのは、 源氏自身が何かと指図《さしず》をして、 宮邸に足らぬ物を何かと…
落ちようとする月の光が 西の妻戸の開いた口からさしてきて、 その向こうにあるはずの廊もなくなっていたし、 廂《ひさし》の板もすっかり取れた家であるから、 明るく室内が見渡された。 昔のままに飾りつけのそろっていることは、 忍ぶ草のおい茂った外見…
泊まって行くことも この家の様子と自身とが調和の取れないことを思って、 もっともらしく口実を作って源氏は帰ろうとした。 自身の植えた松ではないが、 昔に比べて高くなった木を見ても、 年月の長い隔たりが源氏に思われた。 そして源氏の自身の今日の身…
「長くお逢いしないでも、 私の心だけは変わらずにあなたを思っていたのですが、 何ともあなたが言ってくださらないものだから、 恨めしくて、 今までためすつもりで冷淡を装っていたのですよ。 しかし、三輪《みわ》の杉《すぎ》ではないが、 この前の木立…