「御信頼しているものですから、子供をお預けしまして、
親である私はかえって何の世話もいたしませんで、
手もとに置きました娘の後宮のはげしい競争に
敗惨《はいざん》の姿になって、
疲れてしまっております方のことばかりを心配して
世話をやいておりまして、
こちらに御 厄介《やっかい》になります以上は、
私がそんなふうに捨てて置きましても、
あなた様は彼を一人並みの女にしてくださいますことと
期待していたのですが、
意外なことになりましたから、私は残念なのです。
源氏の大臣は天下の第一人者といわれるりっぱな方ではありますが
ほとんど家の中どうしのような者のいっしょになりますことは、
人に聞こえましても軽率に思われることです。
低い身分の人たちの中でも、
そんなことは世間へはばかってさせないものです。
それはあの人のためにもよいことでは決してありません。
全然離れた家へはなやかに婿として迎えられることが
どれだけ幸福だかしれません。
従姉《いとこ》の縁で強《し》いた結婚だというように取られて、
源氏の大臣も不快にお思いになるかもしれませんよ。
それにしましてもそのことを私へお知らせくださいましたら、
私はまた計らいようがあるというものです。
ある形式を踏ませて、
少しは人聞きをよくしてやることもできたでしょうが、
あなた様が、
ただ年若な者のする放縦な行動そのままに
お捨て置きになりましたことを私は遺憾《いかん》に思うのです」
くわしく大臣が言うことによって、
はじめて真相をお悟りになった宮は、
夢にもお思いにならないことであったから、
あきれておしまいになった。
🌹🎼突然の別れ written by マニーラ
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