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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

平家物語55 第3巻 御産②〈ごさん〉〜The Tale of the Heike🪷

ところで中宮の御産は、陣痛は続くのだが、難産である。

なかなかご誕生にならない。

つきそっていた入道清盛や奥方は、

ただ胸に手を押しあてたまま、おろおろするばかりで、

頼りにならぬことおびただしい。

人びとが、うかがいを立てても、

「どうかうまくやってくれ、

 よいように急いでやってくれ」

と声をふるわすばかりであった。

戦場なら、こんなみじめな思いはしないと、

後程人に話したが、

人の親清盛の狼狽《ろうばい》ぶりは想像にあまりあるものがある。

 このご難産に、殿中でお祈りする者は、

房覚《ぼうかく》、性運《しょううん》の両僧正、

俊尭《しゅんぎょう》法印、豪禅《ごうぜん》、

実全《じつぜん》両僧都などで、

何れも僧伽《そうが》の句などをくり返し読み秘法をつくした。

中でも法皇は、この時、

熊野御参詣の前でご精進中であったのだが、

わざわざ中宮の帳の近くに坐られて、

千手経を声高く読経されたのであった。

「たとえ、どんな悪霊でも、

 この老法師がここにいる以上近づくはずはない。

 いまとりついている物の怪は、

 何れも皇恩で人となったのだから、

 物の怪に報恩の心はなくとも、

 祟《たた》りをなすことが出来ようか、

 悪霊共よ、速かに退散せよ」

といわれると、

今まで荒れ狂っていた物の怪もしばしはしずまったのである。

さらに、

「女人の難産にも、

 心をこめて大悲呪《だいひじゅ》を称えれば、

 鬼神退散、安産疑いなし」

と、水晶の数珠を取りだして押しもむと、

中宮はご安産であったばかりでなく、

産れたのは皇子であった。

「ご安産です。皇子ご誕生ですぞ」

とみすの中から躍るように出て来て、

喜び声で高らかに告げたのは

中宮亮重衡《ちゅうぐうのすけしげひら》卿、

法皇を初め、関白太政大臣以下の公卿たち、

下々《しもじも》にいたるまで、どっと歓びの声をあげた。

歓声は御所から門外に、そして京の街々を包んだ。

清盛は嬉しさのあまり、

声を立てて泣いたという。

 小松大臣《こまつのおとど》は、

金銭を九十九文、皇子の枕元において心から祈った。

「天を父とし、地を母と定め給え。

 ご寿命は不老長寿の仙人のように保ち給え。

 御心には天照大神入らせ給え」

そして古式に従って桑の弓に蓬《よもぎ》の矢をつがえ、

天地四方を射たのであった。

🪷🎼繰り返す、穏やかな日々の中で written by 蒲鉾さちこ

 

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