自身のことでこんな騒ぎのあることも知らずに
源氏の若君が来た。
一昨夜は人が多くいて、
恋人を見ることのできなかったことから、
恋しくなって夕方から出かけて来たものであるらしい。
平生大宮はこの子をお迎えになると
非常にお嬉しそうなお顔をあそばしてお喜びになるのであるが、
今日はまじめなふうでお話をあそばしたあとで、
「あなたのことで内大臣が来て、
私までも恨めしそうに言ってましたから気の毒でしたよ。
よくないことをあなたは始めて、
そのために人が不幸になるではありませんか。
私はこんなふうに言いたくはないのだけれど、
そういうことのあったのを、
あなたが知らないでいてはと思ってね」
とお言いになった。
少年の良心にとがめられていることであったから、
すぐに問題の真相がわかった。若君は顔を赤くして、
「なんでしょう。
静かな所へ引きこもりましてからは、
だれとも何の交渉もないのですから、
伯父様の感情を害するようなことはないはずだと私は思います」
と言って羞恥《しゅうち》に堪えないように見えるのを
かわいそうに宮は思召《おぼしめ》した。
「まあいいから、これから気をおつけなさいね」
とだけお言いになって、
あとはほかへ話を移しておしまいになった。
これからは手紙の往復も
いっそう困難になることであろうと思うと、
若君の心は暗くなっていった。
💐🎼静やかな涙 written by ゆうり
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