google.com, pub-8944455872984568, DIRECT, f08c47fec0942fa0

源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

平家物語61 第3巻 有王①〈ありおう〉〜The Tale of the Heike💐

たったひとり、鬼界ヶ島に取り残された俊寛が、

幼い頃から可愛がって使っていた有王という少年があった。

鬼界ヶ島の流人が

大赦になって都入りをするという話を伝え聞いた有王は、

喜び勇んで鳥羽まで出迎えにいった。

「どんなにおやつれになってお帰りだろう、

 随分辛いことだったろうなあ」

あれこれ考えているうちに、

鬼界ヶ島の流人らしい一行が到着した。

見送り人のごった返す中で、

有王は、俊寛の姿を探し求めたが、

それらしい人の姿は見当らなかった。

有王は次第に不安と焦燥を覚えながらも、

「そんなはずはない、そんなバカなことはない」

と自分にいい聞かせながら、

一人一人の顔をのぞきこむようにして探した。

何度探しても結局は、無駄であった。

俊寛らしい人の影はみえないのである。

「もし、一寸お尋ねいたします」

思い切って有王は、人に尋ねてみようと決心した。

「今日ご大赦のあった鬼界ヶ島流人のうちの一人、

俊寛僧都のご消息をご存じではありませぬか?」

 年端《としは》のゆかない少年に声を掛けられて、

一寸迷惑そうな様子をみせた者も、

そのひたむきなまなざしを見て、驚いたらしい。

「あの方はな、まだ罪が許されずに、

 島に残されたという話じゃよ」

「それは、真実のことでございますか?」

「お前様には気の毒なようだが、本当のことらしい。

 係りの役人もそういっておったようでのう」

有王は、すっかりがっかりして、

疲れた足を引きずって京に戻ってきた。

 それから有王の六波羅通いが始まった。

もしやご赦免のお沙汰でもないかと、

六波羅の邸のあたりをうろうろしたり、

人の話に聞耳をたてたりした。

しかし、一向に赦免の様子もなく、日が過ぎていった。

 

ある日、有王は決心した。

「このまま、べんべんと六波羅の許しを待っていたのでは、

 いつになるかわからない、

 ひとつ、自分が訪ねて行ってみよう」

思い立つと、有王は直ぐに、

俊寛の娘が一人でそっと隠れ忍んでいるところにいって、

自分の決心を語った。

「この度のご大赦には、何とも残念な事、

 僧都お一人お許しが出ず、

 その後もいろいろ調べてみましたが、

 当分ご赦免の様子もありませぬ、

 そうとなれば、私が、何とかして島に渡り、

 お行方をお尋ねして参りたいと思います。

 就きましては、姫君自らのお文を頂戴できれば、

 どんなにかお喜びになりますことか」

姫の手紙をしっかり元結《もとゆい》にかくしこんで、

有王は身軽な装立ちで都をあとにした。

両親にも知人にも、誰にも知らさず、

こっそり出発したのである。

💐🎼悴む手 written by もっぴーさうんど

 

少納言のホームページ 源氏物語&古典 syounagon-web ぜひご覧ください🪷 https://syounagon-web-1.jimdosite.com

 

🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷