姫君は無邪気に父君といっしょに車へ早く乗りたがった。
車の寄せられてある所へ明石は自身で姫君を抱いて出た。
片言の美しい声で、
袖をとらえて母に乗ることを勧めるのが悲しかった。
末遠き 二葉の松に 引き分かれ
いつか木高き かげを見るべき
とよくも言われないままで非常に明石は泣いた。
こんなことも想像していたことである、
心苦しいことをすることになったと
源氏は歎息《たんそく》した。
「生《お》ひ初《そ》めし根も深ければ
武隈《たけくま》の松に小松の千代を並べん
気を長くお待ちなさい」
と慰めるほかはないのである。
道理はよくわかっていて抑制しようとしても
明石の悲しさはどうしようもないのである。
乳母《めのと》と少将という若い女房だけが従って行くのである。
守り刀、天児《あまがつ》などを持って少将は車に乗った。
女房車に若い女房や童女などをおおぜい乗せて見送りに出した。
源氏は道々も明石の心を思って罪を作ることに
知らず知らず自分はなったかとも思った。
❄️🎼禁足領域 written by のる
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