2024-01-21から1日間の記事一覧
子さえ取ればあとは無用視するように 女が思わないかと気がかりに思って 年内にまた源氏は大井へ行った。 寂しい山荘住まいをして、 唯一の慰めであった子供に離れた女に同情して 源氏は絶え間なく手紙を送っていた。 夫人ももうこのごろではかわいい人に免…
袴着《はかまぎ》は たいそうな用意がされたのでもなかったが 世間並みなものではなかった。 その席上の飾りが雛《ひな》遊びの物のようで美しかった。 列席した高官たちなどはこんな日にだけ来るのでもなく、 毎日のように出入りするのであったから目だたな…
如月に紫宸殿で催された桜花の宴で、 光源氏は頭中将らと共に漢詩を作り舞を披露した。 宴の後、朧月夜に誘われふと入り込んだ弘徽殿で、 源氏は廊下から聞こえる歌に耳を澄ます。 照りもせず 曇りも果てぬ 春の夜の 朧月夜に似るものぞなき 源氏はその歌を…
【第7帖 紅葉賀 前半】 世間は朱雀院で開かれる紅葉賀に向けての準備でかまびすしい。 桐壺帝は最愛の藤壺が懐妊した喜びに酔いしれ、 一の院の五十歳の誕生日の式典という慶事を より盛大なものにしようという意向を示しているため、 臣下たちも舞楽の準備…
どうしてあの人に生まれて、 この人に生まれてこなかったか、 自分の娘として完全に瑕《きず》のない所へは なぜできてこなかったのかと、 さすがに残念にも源氏は思うのであった。 当座は母や祖母や、 大井の家で見馴れた人たちの名を呼んで泣くこともあっ…