たいそうな用意がされたのでもなかったが
世間並みなものではなかった。
その席上の飾りが雛《ひな》遊びの物のようで美しかった。
列席した高官たちなどはこんな日にだけ来るのでもなく、
毎日のように出入りするのであったから目だたなかった。
ただその式で姫君が
袴の紐《ひも》を互いちがいに
襷形《たすきがた》に胸へ掛けて結んだ姿が
いっそうかわいく見えたことを言っておかねばならない。
大井の山荘では毎日子を恋しがって明石が泣いていた。
自身の愛が足らず、
考えが足りなかったようにも後悔していた。
尼君も泣いてばかりいたが、
姫君の大事がられている消息の伝わってくることは
この人にもうれしかった。
十分にされていて
袴着の贈り物などここから持たせてやる必要は
何もなさそうに思われたので、
姫君づきの女房たちに、
乳母をはじめ新しい一重ねずつの華美な衣裳を
寄贈《おく》るだけのことにした。
🌿和花が心に舞う written by alaki paca
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