子さえ取ればあとは無用視するように
女が思わないかと気がかりに思って
年内にまた源氏は大井へ行った。
寂しい山荘住まいをして、
唯一の慰めであった子供に離れた女に同情して
源氏は絶え間なく手紙を送っていた。
夫人ももうこのごろではかわいい人に免じて
恨むことが少なくなった。
正月が来た。
うららかな空の下に二条の院の源氏夫婦の幸福な春があった。
出入りする顕官たちは七日に新年の拝礼を行なった。
若い殿上役人たちもはなやかに
思い上がった顔のそろっている御代《みよ》である。
それ以下の人々も心の中には苦労もあるであろうが、
表面はそれぞれの職業に楽しんでついているふうに見えた。
🌿緑の渓流 written by 天野 七祈
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