大弐《だいに》の娘の五節《ごせち》は、
一人でしていた心の苦も解消したように喜んで、
どこからとも言わせない使いを出して、
二条の院へ歌を置かせた。
須磨の浦に 心を寄せし 船人の
やがて朽《く》たせる 袖を見せばや
字は以前よりずっと上手になっているが、
五節に違いないと源氏は思って返事を送った。
かへりては かごとやせまし 寄せたりし
名残《なごり》に 袖の乾《ひ》がたかりしを
源氏はずいぶん好きであった女であるから、
誘いかけた手紙を見ては
訪ねたい気がしきりにするのであるが、
当分は不謹慎なこともできないように思われた。
花散里《はなちるさと》などへも手紙を送るだけで、
逢いには行こうとしないのであったから、
かえって京に源氏のいなかったころよりも寂しく思っていた。
☔️雨だれを聞きながら written by のる☔️
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