しめやかにお話をあそばすうちに夜になった。
十五夜の月の美しく静かなもとで
昔をお忍びになって帝はお心をしめらせておいでになった。
お心細い御様子である。
「音楽をやらせることも近ごろはない。
あなたの琴の音もずいぶん長く聞かなんだね」
と仰せられた時、
わたつみに 沈みうらぶれ ひるの子の
足立たざりし 年は経にけり
と源氏が申し上げると、
帝は兄君らしい憐《あわれ》みと、
君主としての過失を
みずからお認めになる情を優しくお見せになって、
宮ばしら めぐり逢ひける 時しあれば
別れし春の 恨み残すな
と仰せられた。
艶《えん》な御様子であった。
🌷🎼あの日の僕たちへ written by 蒲鉾さちこ🌷
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