暗くなってから着いた二条の院のはなやかな空気は
どこにもあふれるばかりに見えて、
田舎に馴れてきた自分らがこの中で暮らすことは
きまりの悪い恥ずかしいことであると、
二人の女は車から下りるのに躊躇《ちゅうちょ》さえした。
西向きの座敷が姫君の居間として設けられてあって、
小さい室内の装飾品、手道具がそろえられてあった。
乳母の部屋は西の渡殿の北側の一室にできていた。
姫君は途中で眠ってしまったのである。
抱きおろされて目がさめた時にも泣きなどはしなかった。
夫人の居間で菓子を食べなどしていたが、
そのうちあたりを見まわして母のいないことに気がつくと、
かわいいふうに不安な表情を見せた。
源氏は乳母を呼んでなだめさせた。
残された母親はましてどんなに悲しがっていることであろうと、
想像されることは、源氏に心苦しいことであったが、
こうして最愛の妻と二人でこのかわいい子をこれから育てていくことは
非常な幸福なことであるとも思った。
🌿朝霧の守り written by のる
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