女はもとより思い乱れていた。
もっともなことである。
思いがけぬ旅に 京は捨てても また帰る日のないことなどは
源氏の思わなかったことであった。
慰める所がそれにはあった。
今度は幸福な都へ帰るのであって、
この土地との縁はこれで終わると見ねばならないと思うと、
源氏は物哀れでならなかった。
侍臣たちにも幸運は分かたれていて、
だれもおどる心を持っていた。
京の迎えの人たちもその日からすぐに下って来た者が多数にあって、
それらも皆人生が楽しくばかり思われるふうであるのに、
主人の入道だけは泣いてばかりいた。
そして七月が八月になった。
色の身にしむ秋の空をながめて、
自分は今も昔も恋愛のために絶えない苦を負わされる、
思い死にもしなければならないようにと
源氏は思い悶《もだ》えていた。
🍂🎼お別れ music byハシマミ🍂
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