源氏物語&古典文学🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

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禁断の狂おしい恋の虜【源氏物語69 第六帖 若紫12】逢瀬を重ね 藤壺の宮は懐妊。夢占いで夢を現実にまざまざ続き恐怖を覚える。

 
 

源氏の恋の万分の一も告げる時間のあるわけはない。

永久の夜が欲しいほどであるのに、逢わない時よりも恨めしい別れの時が至った。

見てもまた逢ふ夜|稀《まれ》なる夢の中《うち》にやがてまぎるるわが身ともがな  

涙にむせ返って言う源氏の様子を見ると、

さすがに宮も悲しくて、

『世語りに 人やつたへん 類《たぐ》ひなく 憂《う》き身をさめぬ 夢になしても』

(※ 音読に際し、「つたえん」と読まねばならぬところを 「つたへん」と読んでいました。お詫びします🙇‍♀️)

 とお言いになった。

 

宮が煩悶《はんもん》しておいでになるのも道理なことで、

恋にくらんだ源氏の目にももったいなく思われた。

源氏の上着などは王命婦がかき集めて寝室の外へ持ってきた。

源氏は二条の院へ帰って泣き寝に一日を暮らした。

手紙を出しても、例のとおり御覧にならぬという

王命婦の返事以外には得られないのが非常に恨めしくて、

源氏は御所へも出ず二、三日引きこもっていた。

 

これをまた病気のように解釈あそばして

帝がお案じになるに違いないと思うともったいなく

空恐ろしい気ばかりがされるのであった。

宮も御自身の運命をお歎《なげ》きになって煩悶が続き、

そのために御病気の経過もよろしくないのである。

宮中のお使いが始終来て 御所へお帰りになることを促されるのであったが、

なお宮は里居《さとい》を続けておいでになった。

 

宮は実際おからだが悩ましくて、

しかもその悩ましさの中に生理的な現象らしいものもあるのを、

宮御自身だけには思いあたることがないのではなかった。

情けなくて、これで自分は子を産むのであろうかと 煩悶をしておいでになった。

まして夏の暑い間は 起き上がることもできずにお寝みになったきりだった。

御妊娠が三月であるから女房たちも気がついてきたようである。

 

宿命の恐ろしさを宮はお思いになっても、人は知らぬことであったから、

こんなに月が重なるまで御内奏もあそばされなかったと 皆驚いてささやき合った。

宮の御入浴のお世話なども きまってしていた宮の乳母の娘である弁とか、

王命婦とかだけは不思議に思うことはあっても、

この二人の間でさえ話し合うべき問題ではなかった。

 

命婦は人間がどう努力しても避けがたい宿命というものの力に 驚いていたのである。

宮中へは御病気やら物怪《もののけ》やらで

気のつくことのおくれたように奏上したはずである。

だれも皆そう思っていた。

帝はいっそうの熱愛を宮へお寄せになることになって、

以前よりもおつかわしになるお使いの度数の多くなったことも、

宮にとっては空恐ろしくお思われになることだった。

 

煩悶の合い間というものがなくなった源氏の中将も

変わった夢を見て夢解きを呼んで合わさせてみたが、

及びもない、思いもかけぬ占いをした。

そして、

「しかし順調にそこへお達しになろうとするのには

お慎みにならなければならぬ故障が一つございます」

 と言った。

夢を現実にまざまざ続いたことのように言われて、源氏は恐怖を覚えた。

「私の夢ではないのだ。ある人の夢を解いてもらったのだ。

今の占いが真実性を帯びるまではだれにも秘密にしておけ」

とその男に言ったのであるが、

源氏はそれ以来、どんなことがおこってくるのかと思っていた。

 

その後に源氏は藤壺の宮の御懐妊を聞いて、

そんなことがあの占いの男に言われたことなのではないかと思うと、

恋人と自分の間に子が生まれてくるということに

若い源氏は昂奮《こうふん》して、

以前にもまして 言葉を尽くして逢瀬《おうせ》を望むことになったが、

王命婦《おうみょうぶ》も宮の御懐妊になって以来、

以前に自身が、はげしい恋に身を亡《ほろぼ》しかねない源氏に

同情してとった行為が重大性を帯びていることに気がついて、

策をして源氏を宮に近づけようとすることを避けたのである。

 

源氏はたまさかに宮から一行足らずのお返事の得られたこともあるが、

それも絶えてしまった。

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