2025-02-01から1ヶ月間の記事一覧
後《のち》にはあの女神の身体中に生じた雷の神たちに たくさんの黄泉《よみ》の國の魔軍を副えて追《お》わしめました。 そこでさげておいでになる長い劒を拔いて後の方に振りながら逃げておいでになるのを、 なお追つて、黄泉比良坂《よもつひらさか》の坂…
イザナギの命はお隱れになつた女神にもう一度會いたいと思われて、 後《あと》を追つて黄泉《よみ》の國に行かれました。 そこで女神が御殿の組んである戸から出てお出迎えになつた時に、 イザナギの命《みこと》は、 「最愛のわたしの妻よ、あなたと共に作…
——地下にくらい世界があつて、魔物がいると考えられている。 これは異郷説話の一つである。 火の神を斬る部分は鎭火祭の思想により、黄泉の國から逃げてくる部分は、 道饗祭の思想による。黄泉の部分は、主として出雲系統の傳來である。 そこでイザナギの命…
神々の生成 ——前と同じ形で萬物の起原を語る。 火の神を生んでから水の神などの出現する部分は鎭火祭の思想による。—— このように國々を生み終つて、更《さら》に神々をお生みになりました。 そのお生み遊ばされた神樣の御《おん》名はまずオホコトオシヲの…
【源氏物語803 第26帖 常夏14完】近江の君は、甘いにおいの薫香を熱心に着物へ焚き込む。紅を赤々とつけて、髪をきれいになでつけた姿にはにぎやかな愛嬌があった、女御との会談にどんな失態をすることか。
葦垣《あしがき》のまぢかきほどに侍《はべ》らひながら、 今まで影踏むばかりのしるしも侍らぬは、 なこその関をや据《す》ゑさせ給ひつらんとなん。 知らねども武蔵野《むさしの》といへばかしこけれど、 あなかしこやかしこや。 点の多い書き方で、裏には…
権勢の強さの思われる父君を見送っていた令嬢は言う。 「ごりっぱなお父様だこと、あんな方の種なんだのに、 ずいぶん小さい家で育ったものだ私は」 五節《ごせち》は横から、 「でもあまりおいばりになりすぎますわ、 もっと御自分はよくなくても、 ほんと…
「いいえ、かまいませんとも、令嬢だなどと思召《おぼしめ》さないで、 女房たちの一人としてお使いくださいまし。 お便器のほうのお仕事だって私はさせていただきます」 「それはあまりに不似合いな役でしょう。 たまたま巡り合った親に孝行をしてくれる心…
座敷の御簾《みす》をいっぱいに張り出すようにして裾をおさえた中で、 五節《ごせち》という生意気な若い女房と令嬢は双六《すごろく》を打っていた。 「しょうさい、しょうさい」 と両手をすりすり賽《さい》を撒《ま》く時の呪文を早口に唱えているのに …
昔は何も深く考えることができずに、 あの騒ぎのあった時も恥知らずに平気で父に対していたと思い出すだけでも 胸がふさがるように雲井の雁は思った。 大宮の所からは始終|逢《あ》いたいというふうにお手紙が来るのであるが、 大臣が気にかけていることを…
雲井の雁はちょうど昼寝をしていた。 薄物の単衣を着て横たわっている姿からは暑い感じを受けなかった。 可憐《かれん》な小柄な姫君である。 薄物に透いて見える肌《はだ》の色がきれいであった。 美しい手つきをして扇を持ちながらその肱《ひじ》を枕にし…