2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧
【源氏物語787 第25帖 蛍12】源氏は姫君を完全な女性に仕上げることに一所懸命であった。継母が意地悪をする小説も多かったから、選択に選択をしたよいものだけを姫君のために写させ 絵に描かせたりした。
「浅はかな、ある型を模倣したにすぎないような女は 読んでいましてもいやになります。 空穂《うつぼ》物語の藤原《ふじわら》の君の姫君は 重々しくて過失はしそうでない性格ですが、 あまり真直《まっすぐ》な線ばかりで、 しまいまで女らしく書かれてない…
【源氏物語786 第25帖 蛍11】「姫君の前でこうした男女関係の書かれた小説は読んで聞かせないように。恋をし始めた娘が悪いわけではないが、それを普通のことのように思ってしまわれるのが危険ですからね」
玉鬘は襟《えり》の中へ顔を引き入れるようにして言う。 「小説におさせにならないでも、 こんな奇怪なことは話になって世間へ広まります」 「珍しいことだというのですか。 そうです。私の心は珍しいことにときめく」 ひたひたと寄り添ってこんな戯れを源氏…
「だれの伝記とあらわに言ってなくても、 善《よ》いこと、悪いことを目撃した人が、見ても見飽かぬ美しいことや、 一人が聞いているだけでは憎み足りないことを後世に伝えたいと、 ある場合、 場合のことを一人でだけ思っていられなくなって 小説というもの…
【源氏物語784 第25帖 蛍9】玉鬘は興味を小説に持って、毎日写したあり、読んだりした。数奇な女の運命が書かれてある小説の中にも、自身の体験したほどの変わったことにあっている人はないと玉鬘は思った。
梅雨《つゆ》が例年よりも長く続いて いつ晴れるとも思われないころの退屈さに 六条院の人たちも絵や小説を写すのに没頭した。 明石《あかし》夫人はそんなほうの才もあったから 写し上げた草紙などを姫君へ贈った。 若い玉鬘《たまかずら》はまして興味を小…
【源氏物語783 第25帖 蛍8】髭黒右大将のことを深味のあるような人であると花散里が言うのを聞いても、たいしたことがあるものでない、婿などにしては満足していられないであろうと源氏は否定したく思った。
源氏は花散里のほうに泊まるのであった。 いろいろな話が夫人とかわされた。 「兵部卿の宮はだれよりもごりっぱなようだ。 御容貌などはよろしくないが、 身の取りなしなどに高雅さと愛嬌《あいきょう》のある方だ。 そのほかはよいと言われている人たちにも…
【源氏物語 第25帖782 蛍7】 女房たちは今日の競技の見物を喜んだ。玉鬘の方からも童女などが見物に来て、廊の戸に御簾が青やかにかけ渡され、紫ぼかしの几帳がずっと立てられた所を女房が行き来していた。
今日は美しく作った薬玉《くすだま》などが諸方面から贈られて来る。 不幸だったころと今とがこんなことにも比較されて考えられる玉鬘は、 この上できるならば世間の悪名を負わずに済ませたいともっともなことを願っていた。 源氏は花散里《はなちるさと》夫…
五日には馬場殿へ出るついでにまた玉鬘を源氏は訪《たず》ねた。 「どうでしたか。宮はずっとおそくまでおいでになりましたか。 際限なく宮を接近おさせしないようにしましょう。 危険性のある方だからね。 力で恋人を征服しようとしない人は少ないからね」 …
【源氏物語 第25帖780 蛍5】実の父に娘を認められた上では、これほどの熱情を持つ源氏を夫にすることは似つかわしくないわけでないが、父になり娘の今、この恋が世間の問題にされるであろうと玉鬘は苦しむ。
「鳴く声も聞こえぬ虫の思ひだに人の消《け》つには消《け》ゆるものかは 御実験なすったでしょう」 と宮はお言いになった。 こんな場合の返歌を長く考え込んでからするのは感じのよいものでないと思って、 玉鬘《たまかずら》はすぐに、 声はせで身をのみこ…
「あまりに重苦しいしかたです。 すべて相手次第で態度を変えることが必要で、そして無難です。 少女らしく恥ずかしがっている年齢《とし》でもない。 この宮さんなどに人づてのお話などをなさるべきでない。 声はお惜しみになっても少しは近い所へ出ていな…
【源氏物語778 第25帖 蛍3】宮のご訪問に 心憎いほどの空薫きをさせたり、姫君の座をつくろったりする源氏は、親でなく、よこしまな恋を持つ男であって、玉鬘の心にとっては同情される点のある人であった。
「あまりに重苦しいしかたです。 すべて相手次第で態度を変えることが必要で、そして無難です。 少女らしく恥ずかしがっている年齢《とし》でもない。 この宮さんなどに人づてのお話などをなさるべきでない。 声はお惜しみになっても少しは近い所へ出ていな…