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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧

【源氏物語726 第22帖 玉鬘26】「事情を知っていらっしゃらない方がいられるのだからね」と源氏が隠すように言うと「私がお邪魔なの、私は眠くて何のお話だか分からないのに」と女王は袖で耳をふさいだ。

「発見したって、どんな人かね。 えらい修験者などと懇意になってつれて来たのか」 と源氏は言った。 「ひどいことをおっしゃいます。 あの薄命な夕顔のゆかりの方を見つけましたのでございます」 「そう、それは哀れな話だね、これまでどこにいたの」 と源…

【源氏物語725 第22帖 玉鬘25〈たまかずら〉】灯《ひ》などをともさせてくつろいでいる源氏夫婦は美しかった。紫の女王《にょおう》は二十七、八になった。盛りの美があるのである。

灯《ひ》などをともさせてくつろいでいる源氏夫婦は美しかった。 女王《にょおう》は二十七、八になった。 盛りの美があるのである。 このわずかな時日のうちにも美が新しく加わったかと 右近の目に見えるのであった。 姫君を美しいと思って、 夫人に劣って…

【源氏物語724 第22帖 玉鬘24〈たまかずら〉】右近は、「ちょうど七日お暇をいただいていたのでございますが‥ 山へ参りましてね。お気の毒な方を発見いたしました」と申し上げた。「だれ」と源氏は尋ねた。

右近は旅からすぐに六条院へ出仕した。 姫君の話をする機会を早く得たいと思う心から急いだのである。 門をはいるとすでにすべての空気に 特別な豪華な家であることが感ぜられるのが六条院である。 来る車、出て行く車が無数に目につく。 自分などがこの家の…

【源氏物語723 第22帖 玉鬘23】姫君は、低い身分の人を母として生まれた子供達さえも皆愛されて幸福になっている事が分かった上は、もう救われる時に達したのかもしれないという気になった。

これだけの美貌《びぼう》が備わっていても、 田舎風のやぼな様子が添っていたなら、 どんなにそれを玉の瑕《きず》だと惜しまれることであろう、 よくもこれほどりっぱな貴女にお育ちになったものであると、 右近は少弐未亡人に感謝したい心になった。 母の…

【源氏物語722 第22帖 玉鬘22〈たまかずら〉】右近は、「『二もとの杉のたちどを尋ねずば布留〈ふる〉川のべに君を見ましや』ここでうれしい逢瀬が得られたと申すものでございます」と姫君に言った。

「どうしてもお亡《かく》れになった奥様を 忘れられなく思召《おぼしめ》してね。 奥様の形見だと思って姫君のお世話をしたい、 自分は子供も少なくて物足りないのだから、 その人が捜し出せたなら、 自分の子を家へ迎えたように世間へは知らせておこうと、…

【源氏物語721 第22帖 玉鬘21〈たまかずら〉】「源氏の大臣には、紫の上様や、 その他の奥様もいらっしゃるのでしょう。 本当のお父様の大臣へお知らせする方法を 考えてください」とおとどが言う。

「こんなすぐれたお生まれつきの方を、 もう一歩で暗い世界へお沈めしてしまうところでしたよ。 惜しくてもったいなくて、 家も財産も捨てて頼りにしてよい息子にも娘にも別れて、 今ではかえって知らぬ他国のような心細い気のする京へ 帰って来たのですよ。…

【源氏物語720 第22帖 玉鬘20〈たまかずら〉】美貌と申しても 円光を後ろに負っていらっしゃるわけではありませんが、 美しいお顔と申し上げていいのでございましょう」右近は 微笑んで姫君を眺めた。

殿様はおっしゃいますのですよ、 自分の父君の帝《みかど》様の時から 宮中の女御《にょご》やお后《きさき》、 それから以下の女性は無数に見ているが、 ただ今の帝様のお母様のお后の御美貌と自分の娘の顔とが 最もすぐれたもので、 美人とはこれを言うの…

【源氏物語719 第22帖 玉鬘19〈たまかずら〉】「藤原瑠璃君《ふじわらのるりぎみ》という方のために 経をあげてよくお祈りすると書いてください。その願果たしもさせていただきます」右近は伝えた。

雑用をする僧は願文《がんもん》のことなどもよく心得ていて、 すばやくいろいろのことを済ませていく。 「いつもの藤原瑠璃君《ふじわらのるりぎみ》という方のために 経をあげてよくお祈りすると書いてください。 その方にね、近ごろお目にかかることがで…

【源氏物語718 第22帖 玉鬘18〈たまかずら〉】九州の人達は三日 参籠することにしていた。右近はこの機会に昔の話も人々としたく思って、寺のほうへ三日間参籠すると言わせるために僧を呼んだ。

国々の参詣《さんけい》者が多かった。 大和守《やまとのかみ》の妻も来た。 その派手な参詣ぶりをうらやんで、三条は仏に祈っていた。 「大慈大悲の観音様、ほかのお願いはいっさいいたしません。 姫君を大弐《だいに》の奥様でなければ、 この大和の長官の…

【源氏物語717 第22帖 玉鬘17〈たまかずら〉】右近は、源氏の大臣が玉鬘の姫君をお世話をなさりたいと熱心に思召すことが実現されますよう、幸福におなりになりますように。と祈っているのであった。

右近は人知れず九州の一行の中の姫君の姿を目に探っていた。 そのうちに美しい後ろ姿をした一人の、 非常に疲労した様子で、 夏の初めの薄絹の単衣《ひとえ》のような物を上から着て、 隠された髪の透き影のみごとそうな人を右近は見つけた。 お気の毒である…

【私本太平記44 第1巻 藤夜叉⑩】「さても、分らぬことだらけぞ」一日ごとに、駒は、東国へ近づいていたが、 都の空へ遠ざかるほど、彼が学びえた見聞の判断にも、 視野をかえた懐疑の雲が生じていた。

淀川舟で見かけた一朝臣の姿も、 伊吹のばさら大名の言なども、 顧みれば、なにか偶然めいた感である。 それが一世の指向とは俄にも信じ難い。 さればとて、現朝廷が、 これまでのごとき無気力な朝廷でないことだけは、 確かだった。 ——またいま、堂上に流行…

【私本太平記43 第1巻 藤夜叉⑨】「母の仰せどおり、わしは観て来た。井の中の蛙が世間の端をのぞいたほどな旅かも知れぬが」彼は自負する。この旅が無為でなく、大いに学び得た旅だったとは、信じているのだ。

旅の風はまたふたたび、 馬上の高氏の鬢面《びんづら》をソヨソヨ後ろへ流れてゆく。 その朝、彼は伊吹を立っていた。 別れぎわには、佐々木道誉以下、土岐左近らも、 とにかく表面ねんごろに別辞をつくした。 わけて、道誉は、 「きっと、御再会の日をお待…

【私本太平記42 第1巻 藤夜叉⑧】「小殿、何がなお形見の物でも給わりませ。 いつの日かの、よすがに」もう高氏は慌てていた。彼女の手へ渡したのは、旅立つ日 母から賜わった地蔵菩薩の守り袋だった。

責められているかの如く、 ——なにを泣く。 高氏は刺々《とげとげ》と心でののしる。 あッちへ行け。 消えてなくなれ。 しかし、 それはじぶんの慚愧《ざんき》へ向って言ったことばでもある。 彼の過失が、 そのまま藤夜叉にも同等な過失だったと言いきれる…

【私本太平記41 第1巻 藤夜叉⑦】悲鳴にちかい驚きと本能的な手むかいが高氏をなお火にさせたことは争えない。しかし彼女の爪が、彼の頬を血に染まさせたとは見えなかった。

「……そなた、下野国の御厨にいたことはないか」 「いいえ」 「御厨ノ牧にいたことも」 「ありません」 「では、生国は」 「越前とだけ聞かされておりますが」 「越前」 と、息をひいて。 「じゃあ違っていたか。 余りにも、そなたが牧長の娘とよう似ていたゆ…

【私本太平記40 第1巻 藤夜叉⑥】「そなたは、もしや……」黒髪ぐるみ彼女の顔を両腕の中にいれてじっとまた見た。もう藤夜叉も自分を見入る異様な眉間の陽炎《かげろう》にもなんの恐怖も抱いてはいない。

彼のひとみは、そればかりでないものを見た。 ここには、彼以前に、もひとり人影がたたずんでいた。 いや、その者も木の根か何かにこしかけていたのらしいが、 すぐその辺まで来た高氏の影が ふいに崩れるような恰好でうずくまってしまったのを見ると、 それ…

【私本太平記39 第1巻 藤夜叉⑤】彼はそのまま廊の闇をどすどす歩いて、燃えやまぬその五体を、大庭の夜気に立って冷やした。城の大庭は夜がすみだった。すぐ真上の伊吹山すら影もない。どこかには月がある。

高氏もこれまでに女性の体を知らないのではなかった。 多分に未開な下野国《しもつけ》地方では、 上下共に楽しみといえば 自然飲み食いか男女の関係にかぎられている。 筑波の歌垣《うたがき》に似た上代の遺風が 今なお祭りの晩には行われるほどだった。 …

【私本太平記38 第1巻 藤夜叉④】こんなことは遊女の鳰にはたくさんな覚えがある。 初めのうちの男の峻拒《しゅんきょ》などは上べだけのものでしかない、 ときめこんでいる大胆さなのである。

たぶんもう夜なか過ぎか。 田楽狂言も終って、あれからべつの墨絵の広間で宴となり、 やがて役者たちをも座に加えて ばさらな残夜《ざんや》を飲み更《ふ》かしたのも、 ずいぶん長かった覚えがある。 「……むりもない」 と高氏は自分へつぶやく。 その足もと…

【私本太平記37 第1巻 藤夜叉③】高氏の眸の中で、強烈な一輪の花が、渦となり虹となって燃えた。その花へ、大勢踊りからんで 輪踊りになっていたが、なお彼の網膜には、藤夜叉の舞しか残っていなかった。

遠いむかし。地方の民が、 大蔵省へ馬で貢税《みつぎ》を運び入れながら 唄った国々の歌が 催馬楽《さいばら》となったといわれるが、 田楽ももとは農土行事の田植え囃子《ばやし》だった。 それがやがて、都人士《とじんし》の宴席に興じられ、 ついには近…

【私本太平記36 藤夜叉②】田楽役者の玉虫色に光る衣裳も、田楽女の白粉顔も、かえって夢幻をあざらかにし、われひと共にひとしい時代の抱く哀歓と、それが求める救いの滑稽とを、一種の妖気のように醸していた。

女は、高氏の曲もない飲みぶりに、 その杯を愛惜《いとし》んで、 「小殿、おながれを」 と媚《こ》びて、ねだッた。 そして、彼の浮かない横顔と舞台の方とを等分に見つつ。 「小殿も田楽はお好きなのでございましょう」 「む。きらいでもない」 「さして、…

【私本太平記35 第1巻 藤夜叉①〈ふじやしゃ〉】女性の一人が銚子に白い手を持ち添えて高氏の脇へすりよった。「小殿のおん眉には、まだ御酒も足らぬそうな。それとも、藤夜叉にお見とれでございますか」

——夜《よ》は夜《よる》を新たにして。 と昼間、道誉が言った。 いかにもばさらないい方で彼らしい言と思われたが、 約束のごとくその晩、 城内の的場から武者廂までを容れた俄舞台と桟敷で、 新座の花夜叉一座の、田楽見物が行われた。 もちろん、高氏を主…

🌹私本太平記 第1巻 ⑶ ばさら大名🌹

騎旅は、はかどった。 丹波を去ったのは、先おととい。 ゆうべは近江愛知川《えちがわ》ノ宿《しゅく》だった。 そして今日も、春の日長にかけて行けば、 美濃との境、磨針峠《すりばりとうげ》の上ぐらいまでは、 脚をのばせぬこともないと、 馬上、舂《う…

【平家物語117 第5巻 月見②】庭に生い茂る野草が月明らかに照らし、 草をそよがす秋風に降る虫の声が哀れにまじる。 今様を三度くり返すうちに、大将も大宮の眼にも涙が浮んだ。 侍従は袖で顔をおおった。

実定の身内のもので、 この京に残っているものは近衛河原の大宮ただ一人、 荒野をさまようにも似た心地の実定は大宮を訪れた。 従者が大門を叩く。 「どなた、蓬の露を払ってまで訪れる人もないのに」 とは女の声、あとは一人呟くともとれぬ声である。 「福…

【平家物語116 第5巻 月見①】福原にどうやら新都らしいおもかげが出てきたが、凶変の重なった夏もすでに過ぎ、秋はすでに半ばである。人々は仲秋の月に心を慰めた。

しかしながら新都の建設は少しずつ進んでいった。 六月九日起工の式、八月十日|上棟《じょうとう》の式、 十一月十三日遷幸と定められ、 人々も多少はゆとりをもってきた。 福原にどうやら新都らしいおもかげが出てきたが、 凶変の重なった夏もすでに過ぎ、…

【平家物語116 第5巻 月見①】福原にどうやら新都らしいおもかげが出てきたが、凶変の重なった夏もすでに過ぎ、秋はすでに半ばである。人々は仲秋の月に心を慰めた。

しかしながら新都の建設は少しずつ進んでいった。 六月九日起工の式、八月十日|上棟《じょうとう》の式、 十一月十三日遷幸と定められ、 人々も多少はゆとりをもってきた。 福原にどうやら新都らしいおもかげが出てきたが、 凶変の重なった夏もすでに過ぎ、…

【平家物語115 第5巻 新都】昔、民の炊煙の乏しきを憂えられて、内裏には茅をふき、貢物を免除されるなど、上代の聖君は民を恵み、国を富ますことに心を払われたのであるが、それに比べてと 人々は話した。

この年六月九日、新都の政事始めとして、造営の計画が練られた。 上卿《しょうけい》には徳大寺の左大将 実定卿《じっていのきょう》、 土御門宰相《つちみかどのさいしょうの》中将 通親卿《とうしんのきょう》、 奉行弁《ぶぎょうのべん》には、 前左少弁…

【平家物語114 第5巻 都うつり③】桓武天皇は、土で八尺の人形を造らせ、鉄の鎧兜を着せ、弓矢をこれに持たせて東山の峰に西向きに立てたまま地に埋めた。この都は永久に続くべしという天皇のご祈念であった。

京都を殊の外 気に入られた桓武天皇は、 大臣公卿、諸国の才人などに命じて、 土で八尺の人形をつくり、鉄の鎧兜を着せ、 弓矢をこれに持たせて東山の峰に西向きに立てたまま地に埋めた。 この都は永久に続くべしという桓武天皇のご祈念であった。 「末代に…

【平家物語113 第5巻 都うつり②】「この地の形相をみまするに、左青竜、右白虎、前朱雀《すざく》、後玄武の四神の配置にふさわしき土地、帝都の地としてまことに適当と存じます」という奏上があった

法皇が世を厭われたのは当然であろう。 あれほど強かった政治への執心も 今は全く薄れ消えたかに思われた。 「今の世の政治にかかわろうとは露も思わぬ。 ただ霊山名刹を廻って修行し、心慰めたいものである」 と側近にもらされていた。 さる安元以来、多く…

【平家物語112 第5巻 都うつり①】法皇の御子高倉宮の謀叛を大いに怒り、このたび福原への御幸を強い、四方に板垣をめぐらし、入口を一つだけ開けた三間四方の粗末な板屋を作り、ここに法皇を押しこめた。

京都の街は公卿も庶民も動揺した。 治承四年六月三日の日、天皇は福原へ行幸し、 都うつりさせ給うとのことである。 都うつりの噂はかねて流れてはいたが、 まだまだ先のことであると人々は思っていた。 それが三日ときまっていたのを一日早められた。 こと…

【平家物語111 第四巻完 三井寺炎上】灰燼に帰したのは、本覚院、成喜院、真如院、鐘楼、護法善神の社壇、新熊野の宝殿‥この火災で智証大師が唐からたずさえた所の一切経七千余巻、仏像二千余体は灰となった。

五月二十七日、三井寺攻略の軍が起された。 奈良興福寺と三井寺互に呼応して謀叛の宮を受け入れ、 あるいは武装して出迎えるなど、 これは朝敵の行為であると平家は断じ、 共に討つべしとの声が高まったが、 まず三井寺からと軍が編成された。 大将軍は頭中…

【平家物語110 第四巻 鵺〈ぬえ〉②】彼の弓は満月のように引きしぼられた。南無八幡大菩薩、と心に唱えれば鋒矢は弦を離れた。弦が鋭く鳴った。黒雲の中に目にも止まらず吸いこまれて行く‥

南殿にきた頼政は、 猪早太をかたわらに控えさせると空を仰いだ。 静かに晴れた夜空である。 変化飛来の噂など信じかねる穏かな夜であった。 変化退散の仕事は僧侶にあるはずだ、弓矢とるこの身は、 などと頼政の心中には恐らく不平が渦巻いていたであろう。…