google.com, pub-8944455872984568, DIRECT, f08c47fec0942fa0

源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

紀伊守の屋敷に忍び込む【源氏物語 30 第3帖 空蝉1】女君の所に継娘が遊びにきている。源氏は小君の案内で紀伊守の屋敷に忍び込み 女君の座敷の奥を見る

眠れない源氏は、

「私はこんなにまで人から冷淡にされたことは

 これまでないのだから、

 今晩はじめて人生は悲しいものだと教えられた。

 恥ずかしくて生きていられない気がする」

などと言うのを、

小君《こぎみ》は聞いて涙さえもこぼしていた。

 

非常にかわいく源氏は思った。

思いなしか手あたりの小柄なからだ、

そう長くは感じなかったあの人の髪も

これに似ているように思われてなつかしい気がした。

 

この上しいて女を動かそうとすることも見苦しいことに思われたし、

また真から恨めしくもなっている心から、

それきり言《こと》づてをすることもやめて、

翌朝早く帰って行ったのを、

小君は気の毒な物足りないことに思った。

 

女も非常にすまないと思っていたが、

それからはもう手紙も来なかった。

お憤《おこ》りになったのだと思うとともに、

このまま自分が忘れられてしまうのは悲しいという気がした。

それかといって

無理な道をしいてあの方が通ろうとなさることの続くのはいやである。

それを思うとこれで結末になってもよいのであると思って、

理性では是認しながら物思いをしていた。

源氏は、ひどい人であると思いながら、

このまま成り行きにまかせておくことはできないような焦慮を覚えた。

 

「あんな無情な恨めしい人はないと私は思って、

 忘れようとしても自分の心が自分の思うようにならないから

 苦しんでいるのだよ。

 もう一度逢《あ》えるようないい機会をおまえが作ってくれ」

こんなことを始終小君は言われていた。

困りながらこんなことででも

自分を源氏が必要な人物にしてくれるのがうれしかった。

 

子供心に機会をねらっていたが、

そのうちに紀伊守《きいのかみ》が任地へ立ったりして、

残っているのは女の家族だけになったころのある日、

夕方の物の見分けの紛《まぎ》れやすい時間に、

自身の車に源氏を同乗させて家へ来た。

 

なんといっても案内者は子供なのであるからと

源氏は不安な気はしたが、

慎重になどしてかかれることでもなかった。

目だたぬ服装をして

紀伊守家の門のしめられないうちにと急いだのである。

少年のことであるから

家の侍などが追従して出迎えたりはしないのでまずよかった。

東側の妻戸《つまど》の外に源氏を立たせて、

小君自身は縁を一回りしてから、

南の隅《すみ》の座敷の外から元気よくたたいて

戸を上げさせて中へはいった。

 

女房が、

「そんなにしては人がお座敷を見ます」

と小言《こごと》を言っている。

「どうしたの、

 こんなに今日は暑いのに早く格子《こうし》をおろしたの」

 

「お昼から西の対《たい》

 —寝殿《しんでん》の左右にある対の屋の一つ

 のお嬢様が来ていらっしって碁を打っていらっしゃるのです」

と女房は言った。

 

源氏は恋人とその継娘《ままむすめ》が

碁盤を中にして対《むか》い合っているのをのぞいて見ようと思って

開いた口からはいって、妻戸と御簾《みす》の間へ立った。

 

小君の上げさせた格子がまだそのままになっていて、

外から夕明かりがさしているから、

西向きにずっと向こうの座敷までが見えた。

 

こちらの室の御簾のそばに立てた屏風《びょうぶ》も

端のほうが都合よく畳まれているのである。

普通ならば目ざわりになるはずの几帳《きちょう》なども

今日の暑さのせいで垂れは上げて棹《さお》にかけられている。

灯《ひ》が人の座に近く置かれていた。

中央の室の中柱に寄り添ってすわったのが恋しい人であろうかと、

まずそれに目が行った。

少納言のホームページ 源氏物語&古典 syounagon-web ぜひご覧ください🪷 https://syounagon-web-1.jimdosite.com

 

💠少納言チャンネルは、聴く古典動画を作っております。ぜひチャンネル登録お願いします🌷

 

源氏物語&古典 syounagon-web ぜひご覧ください🪷

https://syounagon-web-1.jimdosite.com