google.com, pub-8944455872984568, DIRECT, f08c47fec0942fa0

源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

碁を打つ女君達を覗き見る源氏【源氏物語 31 第3帖 空蝉 2】碁をうっている女君を隙見する源氏。朗らかな美人の軒端荻(のきばのおぎ)と慎み深い空蝉(うつせみ)

【源氏物語 第三帖 空蝉(うつせみ)
 〜光源氏は空蝉への思いを断つことが出来ない、空蝉の弟の小君(こぎみ)力を借りて彼女の寝所に近づきます。 碁を打つ空蝉と継娘の軒端荻(のきばのおぎ)を隙見した源氏。 夜もふけ寝所に忍び込んだものの、 空蝉はその気配を察知し、 蝉が脱皮するかのように小袿を脱ぎ捨てて逃げてしまいます。 残された軒端荻を一夜を過ごします。
この出来事が、彼女の空蝉という名前(蝉の抜け殻)の由来となっています。

紫の濃い綾《あや》の単衣襲《ひとえがさね》の上に 何かの上着をかけて、

頭の恰好《かっこう》のほっそりとした小柄な女である。

顔などは正面にすわった人からも

全部が見られないように注意をしているふうだった。

痩《や》せっぽちの手はほんの少しより袖《そで》から出ていない。

もう一人は顔を東向きにしていたからすっかり見えた。

 

白い薄衣《うすもの》の単衣襲に

淡藍《うすあい》色の小袿《こうちぎ》らしいものを引きかけて、

紅い袴の紐の結び目の所までも 着物の襟がはだけて胸が出ていた。

きわめて行儀のよくないふうである。

色が白くて、よく肥えていて頭の形と、

髪のかかった額つきが美しい。

目つきと口もとに愛嬌があって 派手な顔である。

髪は多くて、長くはないが、

二つに分けて顔から肩へかかったあたりがきれいで、

全体が朗らかな美人と見えた。

源氏は、だから親が自慢にしているのだと興味がそそられた。

静かな性質を少し添えてやりたいとちょっとそんな気がした。

才走ったところはあるらしい。

碁が終わって駄目石《だめいし》を入れる時など、

いかにも利巧《りこう》に見えて、

そして蓮葉《はすっぱ》に騒ぐのである。

奥のほうの人は静かにそれをおさえるようにして、

「まあお待ちなさい。そこは両方ともいっしょの数でしょう。

 それからここにもあなたのほうの目がありますよ」

などと言うが、

「いいえ、今度は負けましたよ。

 そうそう、この隅の所を勘定しなくては」

指を折って、十、二十、三十、四十と数えるのを見ていると、

無数だという伊予の温泉の湯桁《ゆげた》の数も

この人にはすぐわかるだろうと思われる。

少し下品である。

 

袖で十二分に口のあたりを掩《おお》うて

隙見男《すきみおとこ》に顔をよく見せないが、

その今一人に目をじっとつけていると次第によくわかってきた。

少し腫《は》れぼったい目のようで、

鼻などもよく筋が通っているとは見えない。

はなやかなところはどこもなくて、

一つずついえば醜いほうの顔であるが、

姿態がいかにもよくて、

美しい今一人よりも人の注意を多く引く価値があった。

派手な愛嬌のある顔を

性格からあふれる誇りに輝かせて笑うほうの女は、

普通の見方をもってすれば確かに美人である。

軽佻《けいちょう》だと思いながらも

若い源氏はそれにも関心が持てた。

 

源氏のこれまで知っていたのは、 皆正しく行儀よく、

つつましく装った女性だけであった。

こうしただらしなくしている女の姿を隙見したりしたことは

はじめての経験であったから、

隙見男のいることを知らない女はかわいそうでも、

もう少し立っていたく思った時に、

小君が縁側へ出て来そうになったので

静かにそこを退《の》いた。

そして妻戸の向かいになった渡殿《わたどの》の

入り口のほうに立っていると小君が来た。

済まないような表情をしている。

 

「平生いない人が来ていまして、姉のそばへ行かれないのです」

「そして今晩のうちに帰すのだろうか。逢えなくてはつまらない」

「そんなことはないでしょう。

 あの人が行ってしまいましたら私がよくいたします」

と言った。

さも成功の自信があるようなことを言う、

子供だけれど目はしがよく利《き》くのだから よくいくかもしれないと

源氏は思っていた。

碁の勝負がいよいよ終わったのか、

人が分かれ分かれに立って行くような音がした。

「若様はどこにいらっしゃいますか。 このお格子はしめてしまいますよ」

と言って格子をことことと中から鳴らした。

💠少納言チャンネルは、聴く古典動画を作っております。ぜひチャンネル登録お願いします🌷

 


www.youtube.com

少納言のホームページ 源氏物語&古典 syounagon-web ぜひご覧ください🪷

https://syounagon-web-1.jimdosite.com

 

[rakuten:f172065-kaga:10001237:detail]