2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧
夫人のそばへ寄って、 「ほんとうはね、かわいい子を見て来たのですよ。 そんな人を見ると やはり前生の縁の浅くないということが思われたのですがね、 とにかく子供のことはどうすればいいのだろう。 公然私の子供として扱うことも世間へ恥ずかしいことだし…
🪷【源氏物語568 第18帖 松風32】紫の上が、明石の上への手紙を見ようともしないのを見て、「見ないようにしていて、目のどこかであなたは見ているじゃありませんか」と溢れるような愛嬌で話しかける源氏。
その晩は御所で宿直《とのい》もするはずであるが、 夫人の機嫌《きげん》の直っていなかったことを思って、 夜はふけていたが源氏は夫人をなだめるつもりで帰って来ると、 大井の返事を使いが持って来た。 隠すこともできずに源氏は夫人のそばでそれを読ん…
二条の院に着いた源氏はしばらく休息をしながら 夫人に嵯峨《さが》の話をした。 「あなたと約束した日が過ぎたから私は苦しみましたよ。 風流男どもがあとを追って来てね、 あまり留めるものだからそれに引かれていたのですよ。疲れてしまった」 と言って源…
『めぐりきて 手にとるばかり さやけきや 淡路の島の あはと見し月』 これは源氏の作である。 『浮き雲に しばしまがひし 月影の すみはつるよぞ のどけかるべき』 頭中将《とうのちゅうじょう》である。 右大弁は老人であって、 故院の御代《みよ》にも睦《…
清涼殿での音楽よりも、 場所のおもしろさの多く加わったここの管絃楽に 新来の人々は興味を覚えた。また杯が多く巡った。 ここには纏頭《てんとう》にする物が備えてなかったために、 源氏は大井の山荘のほうへ、 「たいそうでないの纏頭品があれば」 と言…
昔よりいっそう強い勢力を得ている源氏は、 思いやりも深くなった今の心から、 扶《たす》け起こそうとしている女王の家は、 人影もにぎやかに見えてきて、 繁《しげ》りほうだいですごいものに見えた木や草も整理されて、 流れに水の通るようになり、 立ち…