源氏は姫君の様子をくわしく語っていた。
大井の山荘も源氏にとっては愛人の家にすぎないのであるが、
こんなふうにして泊まり込んでいる時もあるので、
ちょっとした菓子、強飯《こわいい》というふうな物くらいを
食べることもあった。
自家の御堂《みどう》とか、
桂《かつら》の院とかへ行って定まった食事はして、
貴人の体面はくずさないが、
そうかといって
並み並みの妾《しょう》の家らしくはして見せず、
ある点までは
この家と同化した生活をするような寛大さを示しているのは、
明石に持つ愛情の深さがしからしめるのである。
明石も源氏のその気持ちを尊重して、
出すぎたと思われることはせず、
卑下もしすぎないのが、
源氏には感じよく思われた。
相当に身分のよい愛人の家でも
これほど源氏が打ち解けて暮らすことはないという話も
明石は知っていたから。
近い東の院などへ移って行っては
源氏に珍しがられることもなくなり、
飽かれた女になる時期を早くするようなものである、
地理的に不便で、
特に思い立って来なければならぬ所にいるのが
自分の強味であると思っているのである。
🪻青空を恋う written by のる
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