東の院の対《たい》の夫人も品位の添った暮らしをしていた。
女房や童女の服装などにも洗練されたよい趣味を見せていた。
明石の君の山荘に比べて近いことは
花散里《はなちるさと》の強味になって、
源氏は閑暇《ひま》な時を見計らってよくここへ来ていた。
夜をこちらで泊まっていくようなことはない。
性格がきわめて善良で、無邪気で、
自分にはこれだけの運よりないのであると
あきらめることを知っていた。
源氏にとってはこの人ほど気安く思われる夫人はなかった。
何かの場合にも
紫夫人とたいした差別のない扱い方を源氏はするのであったから、
軽蔑《けいべつ》する者もなく、
その方へも敬意を表しに行く人が絶えない。
別当も家職も忠実に事務を取っていて
整然とした一家をなしていた。
🌿🎼立夏 written by 落葉 剛
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